り📚書評家による小説のすゝめ

若手書評家、アートカルチャー系ライターをしています。り📚です。元書店員。独自書評や買った本の話、美術館や観劇の記録などをつけていきます。併設趣味ブログhttps://culture76.hateblo.jp/

書評 / デイヴィッド・ヘスカ・ワンブリ・ワイデン『喪失の冬を刻む』

『り📚書店員による小説のすゝめ』

こんにちは。り📚書店員です。

みなさまいかがお過ごしですか?

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本日の独自書評はこちら。

デイヴィッド・ヘスカ・ワンブリ・ワイデンさん著、吉野弘人さん訳『喪失の冬を刻む』をレビューします。

 

喪失の冬を刻む | 種類,ハヤカワ・ミステリ文庫 | ハヤカワ・オンライン』は早川書房より刊行され、ハヤカワ・ミステリ文庫版で発売されています。

国境を越えた世界観

ハードボイルドミステリー『喪失の冬を刻む』。

その小説背景はもう、どんな世界だというくらいびっくりです。

お国によって異なる文化や法律の中でももっとも刺激的なのではないかと思わせる迫力が『喪失の冬を刻む』にはあります。

 

登場人物たちが私生活として送っている日常は、日本人読者のわたしには大いに驚くことばかりでした。

 

法のもとで差別の影響を受けるなんてとても酷いことですし、主人公の職業が処罰屋だなんて小説は聞いたことがない気がします。

『喪失の冬を刻む』を除いては。

 

潔白を証明したければ手を汚せ

「ドラッグ密売の疑いへの潔白を証明したければドラッグを買ってこい」。

おとり捜査の協力要請は分からないでもない。

けれどももう少し、被疑者の気持ちを考えてくれてもいいのではないかなと思いました。

そこからさらにもう一度、「盗聴器なしで買ってきてくれ」と言われた時。

わたしは裏で暗いものが蠢いているのを確信しました。

 

同じだけれど違うこと

信じて良いはずの正義の存在を疑いました。

小説『喪失の冬を刻む』の軸となる部分を睨みました。

国民を守る大義名分を掲げつつもまったくの潔白でない偉い人は、残念ながらいるものです。

けれども『喪失の冬を刻む』のこれほどまでにひどく、危険なところへ押し出されるとは驚きです。

 

国境を越えてもなお共通する点はあり、けれども危険度が度を過ぎているとここでも感じます。

 

同じだけれど違うこと。

 

偉い人が悪いことをするのは、日本でも時にある悲しいことです。

そんな相手や関係者に、切に助けを求めている人がいることをとても虚しく思いました。

そんな地球を小さくしたかのように『喪失の冬を刻む』の主人公やマリー、その周りの人には、

「大衆や世論」と「ごく親しい自分が大切に思う人たち」がぶつかるような出来事が次々と起こります。

 

数で多いのは「大衆や世論」。

けれども親密度を点数のように考慮すれば見逃すことは難しい「ごく親しい自分が大切に思う人たち」。

2つの重さを比べざるをえない場面のまた、日本社会ではまれに目にする光景であります。

 

自分の普段の立場や仕事を思いふと「おかしいな」と違和感を感じつつも、

でも咄嗟に選択したものをきちんと守り抜く。

『喪失の冬を刻む』のこの2人の芯のある行動はとてもかっこいいと思いました。

それがほんとうは正しいと思いました。

 

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銃をもって闘う

『喪失の冬を刻む』の中でも極めて恐ろしいのが戦闘のシーンです。

 

刃物や銃の取り扱いもまた、国や地域で大きく変化があるでしょう。

わたしは日本を離れたところで暮らしたことがないため分からないのですが、その基準は「安全に暮らすことができること」と「身を守る必要があること」のどちらに置かれているのかなと考えました。

 

ここは安全だからそんなものは持たなくていいよ、なのか

ここでは所持が許されていることで安全が保たれているんだよ、なのか。

安全を保証してくれるときと、状況を激化させるときとどちらもあるのかもしれない。

安全や治安に変化があるのか、法律に変化があるのか。

これは、たまごと鶏のような関係ではありませんでしょうか。

 

この白熱した戦闘シーンは、アメリカでは時にあることなのか、小説の中でのものなのか。

実際のところはどうなのだろうとすこし、考えてしまいました。

 

もし源逸に起こりうる事態であったとすれば、では「国民が銃を持つことを許される意味」はどこにあるのかなと思ってしまいました。

 

見えない国境の向こう

実際に渡ったことがなければ見えないものは多いです。

そこの作家さんの小説を読んだり、そこ舞台の映画を見たりしたときに判断がつかないのは「どこまでがリアルか」という問題です。

「どこまでがリアルか」が分かったほうが良い時もありますし、分からない方が良い時もあります。

 

そしてどちらの場合であっても、外国から届けられた作品たちは大きな力を発揮します。

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外国から届けられた小説『喪失の冬を刻む』

実は『喪失の冬を刻む』の作家さん、翻訳者さんともにわたしは初めてお読みした方々です。

わたしは世界の文学を読む時の「リッチさ」のようなものが香る翻訳小説がとてもすきです。

早川書房さんの刊行物はいつでもとても多分に含んでいると思います。

 

今回の『喪失の冬を刻む』という小説もまた、わたしが早川書房さん翻訳書籍がすきな理由のようなものが詰まっていてとてもたのしかったです。

早川書房フィルター」のような、「早川書房濾し器」のような秘密の何かがあると思っています。

そんな早川書房さんの翻訳にまつわるリッチさの秘密を、いつか暴いてみたいと思っています。

 

早川書房さんのリッチさ溢れる小説たちは、読みやすく、顧客ロイヤリティを提供されるプロだと思います。

今後とも一読者として、応援していきたいです。

 

翻訳小説はお値段が高めになり、「読みづらい」「難しい」と言われることもあり、あまり大きな市場ではないのかもしれません。

それはとても残念なことだと思っています。

 

もしはっきりと読み解くことができなかったり、ミステリーのような本筋に大きく触れることができない小説であったとしても、「面白かった」という感想を、このはてなブログ『り📚書店員による小説のすゝめ』には残していく努力をしたいと思っています。

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終わりに📚

本日は『喪失の冬を刻む』をレビューしました。いかがでしたでしょうか。

あまり解像度が高くない文章であったとは思いますが、『喪失の冬を刻む』という面白そうな本があるのだとお伝えすることを目標に、書いてみることにしました。

アップするのはかなり緊張していますが・・・。

どなたかに読んできただけますように。

今日のブログはここまでにしようと思います。

日々たくさんの方に読んでいただけているようで、アクセス解析を見るのがとても楽しいです。

 

とても嬉しいです。どうもありがとうございます!

 始まって間もない小さなブログですが、どうぞよろしくお願いいたします。

 

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以上、り📚書店員でした~!

 

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