『り📚書店員による小説のすゝめ』
こんにちは。り📚書店員です。
みなさまいかがお過ごしですか?
本日の独自書評はこちら。
『かんむり』です。
彩瀬まるさん著、幻冬舎さんより刊行されています。
- 価格: 1650 円
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時代によって変化する「生きる術」
逃げる事、自分を守る事。
ボディ・ポジティブという考え方。
自分にとっての仕事。
女の人の生き方、男の人の生き方。
盛りだくさんの1冊でした。
わたしは小説の、初めから終わりまで、長い時間をかけた物語がすきです。
人の変わったり変わらなかったりする部分に引き込まれます。
同様に、時代も変わったり変わらなかったりします。
10代から夫婦のひとりが亡くなるまで。
どれだけ長い時間なのか未熟なわたしにはまだ想像できないのですが、その中で「時間が足りなかった」「時間を戻せたら」と感じる場面はきっとあるのだと思います。
一度の人生、無為に生きてしまわないために小説や物語はわたしたちに語りかけてくれます。
彩瀬まるさんによる小説『かんむり』も同様です。
『かんむり』はわたしにとってエンターテイメントに終わらずとてもずしりと来るものでした。
『かんむり』夫婦ふたりの話ではありません。
彼らの子どもが登場するのは、「時代」の変化を彷彿とさせるモチーフとして効果的な一石です。
夫婦は「他人」
大切な人こそ理解したい思いが先立ってしまったり、言い過ぎてしまったり。
とても人らしいと思いました。
序盤の学生時代と、いま現在のふたりが行き来する構図。
彼らが大切にしてきた時間をふくらませて、読ませてもらった思いでした。
かけがえのない人との間には「引力」のような何かが働くもなのだなと感じる場面があります。
ふたりにとって再び「引力」が働くまでの離れ離れの時間は、きっととてつもなく長く感じるのだろうと想像しました。
自分の幸福を問う
「自分がどんな状態であれば幸せなのか、どうやら彼はわかる人なのだ。」
主人公は最後まで自分の幸せを掴みかねている様子です。
『かんむり』作中に登場する上の一文は主人公の「わからない」が滲み出たような部分だと思いました。
自分の幸せや安らぎを知っている人は少ないような気がします。
では、知っている人と知らない人の違いはどこにあるのでしょうか。
現代は自分のペースを掴む事がとても難しい社会のような気がするのですが。先天性のものでもない気がしています。
「もうどっちかがちょっと我慢すればいいみたいなのやめよう」
『かんむり』の夫婦は、お互いにこのセリフを言い合います。
とても素敵なことだと思いました。
このセリフを言い合うことはすなわち、互いを尊重して、自分の肩の荷を知ってもらう行為ではないでしょうか。
同時にこの描写にハッとすることもあります。
これほど仲良しの夫婦でも、このセリフを言い合えるまでには長く時間を要するのです。
『かんむり』の夫婦が「もうどっちかがちょっと我慢すればいいみたいなのやめよう」と伝え合う頃には、小説『かんむり』の物語は終盤に差し掛かってしまいます。
互いを尊重して、自分の肩の荷を知ってもらう。
ふたりの他人がここまで到達するまでの果てしなさを思いました。
ふたりの他人とは、「夫婦」なのですが。
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血を分けた子を持ち、同じ墓に入る二人の他人
「血を分けた子を持ち、同じ墓に入る二人の他人」。
これはわたしが『かんむり』の宣伝として実際に目にしたフレーズです。
夫婦のことを指します。
がこれは日本の古典的な夫婦の形ではないでしょうか。
時代の流れを反映していない夫婦の形ではないでしょうか。
とても考えさせられました。
大河小説のように、人ひとり、夫婦ひと組の人生をこれだけ突き詰めた小説『かんむり』において、古典的な夫婦の形とは何を意味するでしょう。
ぜひ『かんむり』を読み始める読者に投げかけてたいフレーズです。
そしてわたしは『かんむり』読者さんのたくさんの感想に、耳を傾けたいです。
終わりに📚
いかがでしたか?
本日は彩瀬まるさん著『かんむり』をご紹介しました。
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彩瀬まるさんはだいすきな作家さんです!
最近読んだものだと、『神様のケーキを頬ばるまで』『花に埋もれる』も素晴らしくのめり込みました。
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女による女のためのR18文学賞排出作家さんは、今後も精力的にチェックしていきたいと思っています。
上の2作『神様のケーキを頬ばるまで』『花に埋もれる』や、R18文学賞排出作家さんの小説を今後どんどん紹介していきたいと考えています。
ぜひチェックしていただけたら嬉しいです。
それでは今日のブログはここまでにしようと思います。
開設したばかりですが、思っていたよりたくさんの方に読んでいただけているようでようで毎日びっくりしています。
とても嬉しいです!
どうもありがとうございます!
始まって間もない小さなブログですが、どうぞよろしくお願いいたします。
ぜひフォローやいいねをしていただけたら嬉しいです!
以上、り📚書店員でした~!