り📚書評家による小説のすゝめ

若手書評家、アートカルチャー系ライターをしています。り📚です。元書店員。独自書評や買った本の話、美術館や観劇の記録などをつけていきます。併設趣味ブログhttps://culture76.hateblo.jp/

書評 / 千早茜『赤い月の香り』『透明な夜の香り』

香りの中に埋もれる思想を。千早茜さんの2作『透明な夜の香り』と『赤い月の香り』をレビュー。

こんにちは。り📚書評家です。

みなさまいかがお過ごしですか。

 

【お得にたっぷり読書しよう】

本日の独自書評はこちら。

千早茜さんの『透明な夜の香り』『赤い月の香り』を2作併せてレビューします。

 

どちらも集英社さんから、シリーズとして刊行されています。

 

1冊ずつ読んでもとても楽しい作品、しかし2冊を並べると思いもよらない対比があるかも?

 

ぜひ小説『透明な夜の香り』と『赤い月の香り』に興味を持っていただくきっかけとなればとても嬉しいです。

 

 

『赤い月の香り』

千早茜さんの小説『赤い月の香り』には、調香師をしている男性が登場します。

一見ガラの悪い場面に始まるこの物語は、読み始めればとても静謐な世界観を有しています。

荒々しい喧嘩の現場で調香師に救出されたのは、主人公となるひとりの男性でした。調香師・朔さんに名刺を渡され、うちで働くようにと誘われます。

 

主人公はそこから、朔さんの暮らす洋館で助手として働くことになるのです。

 

【自分好みのコーヒー、ちゃんとわかってる?】

洋館に出入りするのは男性ばかり。そしてみな、朔さんの調香の腕をきちんと認めており、繊細すぎる館主に同情すらしています。

時にやってくるお客さんは老若男女入り混じりますが、どの人物も朔さんを「天才だ」と聞いて会いにやってきた者たちです。

 

実際に初対面で切り込んだことを聞かれても、香りから都合の悪いことを言い当てられても怒りません。

やっぱり本当に天才だったんだ!と、朔さんの発言を喜んで帰っていく様子すら見受けられました。

 

そうした朔さんの調香師としての毎日を一番近くで見ているのが、小説『赤い月の香り』の主人公になります。

主人公は朔さんの嗅覚に驚き、誰にも理解されないその感覚を理解しようとしていきます。

 

【お得にたっぷり読書しよう】

君の「孤独」を感じさせることはできないだろう?

雇用関係にある男性同士として、朔さんと主人公は穏やかに過ごしていきます。

思わぬ行動をとられても逆上することはなく、静かに距離を置きます。

わたしはそうして彼らが近づきすぎない距離で互いのことをゆっくりと知っていくように感じました。

 

【1年の幕開けに本物のグルメを】

朔さんのことをファーストネームでは呼ばない主人公。

秘密があっても、無駄に知ろうとしない主人公。一方で自分の秘密は嗅覚に乗せられてすべて朔さんにばれているであろうと察している主人公。

 

【自分好みのコーヒー、ちゃんとわかってる?】

雇い主がどれだけ孤独な世界を生きているかを気にしつつも「どうせ俺には関係ないし」という線引きをしているように感じました。

その中で主人公は朔さんにこう言われるのです。

 

「君の感じている世界を誰かにそっくり体験させることはできないだろう。」

「誰もがそれぞれの世界で生きている。」

 

わたしにはこれは、朔さんから主人公への労りのことばに感じました。

実際に主人公も、別ではあるけれど「孤独」という同じものを抱えているもの同士であることにはっとさせられたのではないでしょうか。

 

『赤い月の香り』の中でわたしが感じたのは、そうしたそれぞれの世界をきちんと線引きしつつ人付き合いをする人たちの「孤独」でした。

 

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男性ばかりの洋館の『赤い月の香り』

それぞれの世界をきちんと線引きしつつ人付き合いをする人たちの「孤独」とは、男性ばかりの洋館だからこそ生まれた空気感ではないかと感じたのです。

ここでシリーズ前作『透明な夜の香り』を紹介させてください。

 

【日本に「おいしい紅茶」を届けるお店】

こちらは、朔さんの洋館で働くのは物静かな女性でした。

 

彼女ははじめ、朔さんに香りで何もかもを見破られることを驚いていましたが、体調や生理周期を見抜かれてもわめき立てない冷静さのある女性でした。

それどころか、朔さんの指示にはおとなしく従います。

次第に朔さんとこの女性は深いところで理解をしあっていくようになりました。

 

【1年の幕開けに本物のグルメを】

互いをきちんと尊重し、理解しあっているような関係となっていきます。

ある人が見たら、恋人同士に見えたかもしれません。

 

そうした人間関係を前作『透明な夜の香り』の中で朔さんは築いています。

これは朔さんにとってとても珍しいことであったと他社による台詞できちんと明記されていました。

 

【お得にたっぷり読書しよう】

同性関係と異性関係の心理

恋人が必ずしも異性である必要はないけれど、人間は同性相手と異性相手とでは、態度が少し変わるものではないかとわたしは感じています。

たとえそこに恋愛感情がなかったとしても、異性に対する態度の方が、一般的には同性に対する態度よりも軟化したものになるのではないでしょうか。

 

【日本に「おいしい紅茶」を届けるお店】

異性間の人間関係である『透明な夜の香り』に対し、同性間の人間関係である『赤い月の香り』。

1作目の『透明な夜の香り』の中では、顧客となって洋館へやってくる人物たちは朔さんにプライベートに触れられることを嫌悪している場面が多かったように思いました。

その代わりに館で働く女性は、近くで朔さんのことを深く思いやるのです。

 

【1年の幕開けに本物のグルメを】

一方で、同性間の人間関係の話である『赤い月の香り』の中では、顧客たちは天才を目の前にして喜んでいる様子です。

その一方で、その天才を相手に一歩引いたところから眺めているのが、実は1番近くで働いているはずの男性であるというのがなかなか面白い対比ではないかとわたしは思いました。

 

他者の孤独を思いやるということ

人付き合いの形が異なる『赤い月の香り』『透明な月の香り』どちらの小説でも、テーマは人それぞれの世界観にあるのではないかとわたしは感じました。

同性同士でも、異性同士でも。雇用関係でも顧客関係でも。

どうしたって理解させることが難しい「孤独」を誰しも持っているものではないでしょうか。

 

【日本に「おいしい紅茶」を届けるお店】

近づき踏み越えることが親切になる場合もありますし、距離を置いておくことが親切となる場合もあるでしょう。

 

他者の「孤独」を思いやるということ。

その形のあり方をさまざま見せてもらうことができ、とても興味深かったなと思う小説2冊です。

 

【もっと効率よく読書したい本物の読書家へ捧ぐ革命】

刊行順としては『透明な夜の香り』の次に『赤い月の香り』となります。

もちろん2冊続けて読んでみていただきたいのがわたしの願いですが、まずはどちらか気になったほうを読んでみようかなという読者さんもとてもうれしいです!

 

ぜひ気になっていただけたら、直木賞作家・千早茜さんによる「孤独」を考える世界観をたっぷり味わってみてはいかがでしょうか。

 

【お得にたっぷり読書しよう】

終わりに📚

本日の独自書評では『透明な夜の香り』と『赤い月の香り』2冊の小説を合わせてレビューしました。

いかがでしたか?興味を持っていただけたらとても嬉しいです。

 

わたしは千早茜さんの小説の大ファンで、まだまだ紹介していきたい小説がたくさんあります。

だいすきな分、緊張もするのですが、千早茜さん小説の魅力をお伝えすることができれば嬉しいと思いこれからもブログにしていきたいと考えています。

ぜひ併せて読んでいただけましたらとても嬉しいです。よろしくお願いします!

 

このブログも日々、たくさんの方に読んでいただけているようでありがたいです。

おかげさまでアクセス解析を見るのがとても楽しいです。

 

とても嬉しいです。どうもありがとうございます!

 始まって間もない小さなブログですが、どうぞよろしくお願いいたします。

 

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以上、り📚書店員でした~!

 

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