り📚書評家による小説のすゝめ

若手書評家、アートカルチャー系ライターをしています。り📚です。元書店員。独自書評や買った本の話、美術館や観劇の記録などをつけていきます。併設趣味ブログhttps://culture76.hateblo.jp/

劇評 / 新国立劇場バレエ『シェイクスピア・ダブルビル』

『り📚書店員による小説のすゝめ』

こんにちは。り📚書店員です。

みなさまいかがお過ごしですか?

本日の独自劇評はこちら。

新国立劇場バレエ『シェイクスピア・ダブルビル』をレビューします。

はてなブログ『り📚書店員による小説のすゝめ』初の劇評です。

がんばって書きますので、ぜひ読んでいただけましたら嬉しいです。

新国立劇場バレエ『シェイクスピア・ダブルビル』

新国立劇場バレエ『シェイクスピア・ダブルビル』は、「マクベス」と「夏の夜の夢」の2本だて公演でした。

 

「劇的舞踊」ど真ん中を射抜くようなプログラム。

劇的舞踊という言葉の中でも、これほど「劇」の字が表に出る劇的舞踊は珍しいのではないでしょうか。

 

新国立劇場バレエ団といえば、古典バレエ、コールドバレエ

わたしの印象ではこういうバレエスタンスです。

新しい試みと、吉田都さんがイギリスから持ち帰りたかったもの。

そして持ち帰ったものを「誰に」授けたいのかというものが非常に濃く見えた公演でした。

マクベス

シェイクスピアというからには、舞台上でばたばた人が死ななければいけない。

そんなセオリーもあります。

新国立劇場バレエ世界初演マクベス」は戯曲「マクベス」を心得ているわたしの想像以上の虐殺描写でした。

 

こんなに人が死んでしまう舞踊は見たことがありません。

そしてめちゃめちゃに刺殺シーンに力を入れていらっしゃる・・・!

 

刺す方も、刺される方も。

一度剣を引き抜きまた刺しを繰り返すときの動線が見事なものでした。

 

俳優さん顔負けの刺し殺し / 刺し殺されの演技ではないでしょうか。

 

舞踊のジャンル分けは人によりけりと思いますが、「マクベス」はコンテンポラリーや身体表現にごく近いネオクラシックかなと、わたしは感じました。

小野絢子さん

素晴らしかった・・・!

観てから数日経った今でも、立ち上がって拍手をしたいです。

 

繊細でやさしい役どころイメージの小野絢子さんなのですが、悪役も、きつい女も見事にこなされるのですよね。

いつも驚かされてばかりです。

舞踊家・小野絢子の攻略はいかなる観客にも、振付家にも不可能なのではないでしょうか。

 

膝上スカートのレオタードになって登場する場面のなんと美しいこと。

ここまで「もっと絢子さんに踊って欲しい」と思っていたのはわたしだけではないと思います。

非常に装飾が少ない中で、小野絢子さん持ち味の繊細な体のラインが素晴らしく美しく映ります。

少し頭をたれたパンシェのラインの長さは、実際の小野絢子さんの体の長さ以上のものだったのではないでしょうか。

 

最後、舞台前方にスポットライトを浴びて大文字に伸びるシーン。

まさに「美しい死体」そのものでした。

驚くほどの脱力と、まっすぐに伸びた色白の四肢。

死体としては一見不自然ともいえる伸展した甲先。

 

あれだけ美しいバレリーナの姿はそう拝めるものではないと思います。

 

米沢唯さん

実は『シェイクスピア・ダブルビル』のビジュアル写真が公開された時に何より惹かれたのが米沢唯さん演じるマクベス夫人でした。

この後「夏の夜の夢」でも触れますが、この『シェイクスピア・ダブルビル』では米沢唯さんと池田理沙子さんが世紀に1度のはまり役を披露されています。

 

これ以上にマクベス夫人が似合うものがあろうかと思うほどの完璧なマッチ。

米沢唯さんの中に存在する何かが、マクベス夫人を引き付けます。

 

「夏の夜の夢」

ばたばたと人が倒れて死んでいく「マクベス」に対して可愛らしく、笑いを誘うポジションとして設定された「夏の夜の夢」。

ネオクラシックに近いと先ほど述べた「マクベス」に対し、こちらはクラシックバレエにほど近い演目となっています。

 

妖精さんの多く登場する「夏の夜の夢」では、かぎ足のステップがとても多く登場します。

ぴょこぴょこと小さく弾む可愛さがチャーミングです。

 

ティターニア役をはじめとしてコールドバレエもあばら骨をとてもお上手に動かして妖精の羽を己のものとしています。

 

池田理沙子さん

この『シェイクスピア・ダブルビル』では池田理沙子さんが米沢唯さんとともに、世紀に1度のはまり役を披露されています。

 

池田理沙子さんのティターニアは、まさに本物の妖精さんなのです!

天使の微笑みのような笑顔。ちょっぴり覗く天真爛漫さ。

巧みなかぎ足ステップ。

 

そしてあばら骨と、肘から先のポールドブラとの間の空間にたっぷり含まれた空気。

 

これ以上にティターニア役が似合うものがあろうかと思うほどの完璧なマッチ。

池田理沙子さんのお人柄と踊りの可憐な部分が大いに引き出された役だと言えるでしょう。

 

池田理沙子さんのティターニア役はぜひとももう一眼見たいです。

きっとそう遠くない日に再演されることを望みます・・・!

 

速水渉悟さん

入団間も無くより素晴らしいなあと思い続けていたダンサーさん。

そして速水渉悟さんと、上で述べた池田理沙子さんのパートなリングは素晴らしいのです!

 

速水渉悟さんと池田理沙子さんは、踊りの特性がとてもよく似ているような気がしています。

基本的にダイナミックなステップがお得意でテクニック派です。

 

さらに速水渉悟さんの、正確で床の下の空間を想像させるプリエは何度観ても感激されさせられます。

今回「夏の夜の夢」でまた2人のパートナリングを見ることが叶いました。

今後とも速水渉悟さんと池田理沙子さん、2人の演目をぜひ追っていきたいです。

 

新国立劇場バレエの公式Instagramのリールで練習風景をチラリと見ることが叶いました。

その時からものすごく楽しみにしていたので、思っていたよりもコールドの出番が少なかったことに少しがっかりしてしまいました。

 

新制作であればもっと新国立劇場バレエ「独自」の良さを生かすこともできたと思います。

バレリーナさん達ももっと踊りたかったのではないかと思っています。

 

クラシックバレエだけではない。

新鋭のバレエも、ネオクラシックも、トウシューズで踊りこなすことができるのが、新国立劇場バレエの素晴らしいところだと思います。

 

そしてどの演目を選択しても、コールドの完成度が高すぎるのです。

 

次回演目が『白鳥の湖』とのことで吉田都さんもその辺りは考えられて、バランスを取られているのだと思います。

わたしは今回の『シェイクスピア・ダブルビル』と併せて来月の『白鳥の湖』も観てみることをぜひお勧めしたいです。

終わりに📚

新国立劇場バレエは、わたしが人生でいちばん観ているバレエ団です。

とにかくとにかくだいすきで、ずっと応援している方々です。

 

バレエを観るなら新国立劇場バレエがいちばんだと思っています。年間を通して数々の演目を上映されているので、ぜひ一度、新国立劇場バレエを観てみてほしいです!

今後新国立劇場バレエの過去の上演についての劇評もアップしていけたらいいなと思っていますので、ぜひ「バレエが気になってきたよ」という方にも覗きに来ていただけたら嬉しいです。

(掲載後ここにリンクを貼りいたします)

 

今日のブログはここまでにしようと思います。

日々たくさんの方に読んでいただけているようで、アクセス解析を見るのがとても楽しいです。

 

とても嬉しいです!

どうもありがとうございます!

 

始まって間もない小さなブログですが、どうぞよろしくお願いいたします。

 

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以上、り📚書店員でした~!