り📚書評家による小説のすゝめ

若手書評家、アートカルチャー系ライターをしています。り📚です。元書店員。独自書評や買った本の話、美術館や観劇の記録などをつけていきます。併設趣味ブログhttps://culture76.hateblo.jp/

書評 / 安堂ホセ『ジャクソンひとり』

『り📚書店員による小説のすゝめ』

こんにちは。り📚書店員です。

みなさまいかがお過ごしですか?

 

【読みたい本がありすぎる!本物の読書家さんへ】

本日の独自書評はこちら。

安堂ホセさん著『ジャクソンひとり』をレビューします。

中編小説『ジャクソンひとり』は文芸誌『文藝』にて文藝新人賞受賞上、芥川賞候補に選出されました。

河出書房新社さんより刊行されています。

強烈なメッセージ性を持つ長編文学小説『ジャクソンひとり』。

様々な思考を遠くまで事項導いてくれるこの小説をぜひともお楽しみいただけたら嬉しいです。

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日本国内において、どこまでが日本人でない人に対する「差別」に値するのか

小説『ジャクソンひとり』は偏見にまみれた噂話により物語が開幕します。

それをまるで他人事のように見つめている主人公のジャクソン。

皆が噂をする相手がまるで自分ではないように、乖離したような状態で物事の動きを見ています。

日本に暮らすブラックミックスの男性であること。男性を愛する男性であること。

2つがあまりよくない具合に合わさった噂をたてられて、ジャクソンは立場を追い立てられます。

 

【読みたい本がありすぎる!本物の読書家さんへ】

この序盤に登場するある「映像」を見て、ジャクソンのことを「嫌な奴」「気持ちが悪い奴」だと感じるのは、差別的偏見が大いに関連しているでしょう。 周囲の人物の物言いも関係しているかもしれません。

わたしはそう思いました。

 

「入れ替わってるう〜〜?」

その後ジャクソンは、自分と同じ在日のブラックミックスの仲間と知り合います。彼らは通称ジャクソンズ。

ジャクソンズが仲良くなった時、テレビの金曜ロードショーで放送されていた映画が『ジャクソンひとり』の対比のごとく、メッセージを持つモチーフとなっていると感じました。

男の子と女の子が「入れ替わってるう〜〜?」 と叫ぶその映画は、新海誠氏による大ヒット作『君の名は』ではないでしょうか。

 

【お部屋に彩り、欲しくない?】

日本のみならず、世界的大ヒットを達成した映画『君の名は』。

これはジャクソンの目線に立ってみると、かなり差別的な内容であるとも感じることができました。

 

同じ肌の色で、同じ目鼻立ちをしていないと入れ替わりも何も成立はしない。

『君の名は』を大絶賛していたわたしたち日本人を、当時の安堂ホセさんはどういう目線で見ていたのかと思うと申し訳なくてなりません。

この映画のエンターテイメント性はもちろん充分に保障された点ではありますが、万人が安心をして楽しむことができるコンテンツではなかったということが『ジャクソンひとり』において証明されたのではないでしょうか。

 

『君の名は』 入れ替わりについて疑問に空思わなかった自分のことをとても情けなく思います。

これは自分が立派な差別をしてしまった、動かない事実となると思っています。

 

【読みたい本がありすぎる!本物の読書家さんへ】

茶色のモチーフ

小説『ジャクソンひとり』を読んでいると、序盤の同僚たちを俯瞰して遠くから眺めているようなおとなしいジャクソンは本来の性格ではないのかと思い当たります。

ジャクソンズと知り合ってからのジャクソンは、どちらかというと末っ子キャラです。

すぐにノリノリになり踊り出しそうなキャラクター。甘いものを食べるのがだいすき。

 

小説描写で散見されるのは、ココアやクッキーといった茶色のモチーフです。

ジャクソンはココアのクッキーもとても美味しそうに食べるのです。ブラックミックスのジャクソンが。

 

【あなたが本当に好みのコーヒー豆、わかってる?】

ジャクソンの「好きなものを愛する自由」は保障されているべきです。

好きな食べ物が白くても茶色くても、彼の人格を左右することはありません。

小説『ジャクソンひとり』の中では明記される事はありませんでしたが、ジャクソンはあえて 皮肉を交えるようにしてクッキーやココアを愛していたのか。

もしくは気にせずにただの好みだったのか。

 

今となっては謎ではありますが、小説の中で「色彩」を浮かび上がらせるモチーフとしてクッキーとココアは大いなる活躍をしているといえます。

 

【お部屋に彩り、欲しくない?】

物語の始点と終点

わたしが個人的に『ジャクソンひとり』の何よりも興味深いと思った点が「小説の視点と終点がどこに対応しているのか」という問題についてです。

 

小説『ジャクソンひとり』は大きく2つのパートに分かれていると捉えることができると思います。

それがジャクソンが1人で差別と戦っていく面と、ジャクソンズが一体となって差別と戦っていく面です。

 

ジャクソンズ結成の流れはひじょうに丁寧な筆致で書かれていますが、ジャクソンズが1つの「事件」の後に一体どうなってしまったのかは、小説の読者は知ることができないのです。

この「事件」のあとに空中分解をしてしまったのでしょうか。

それとも永遠の友として、彼らはいまも親しくしているのでしょうか。

 

わたしの読みでは、この流れではおそらくジャクソンズ4人がその後も仲良くしていく事は難しいのではないでしょうか。

一方で、ジャクソンズが二分化して「2組の大親友」のようになっていくことは望ましい結末だと感じます。

仲間の中でも派閥が生じてしまうとしたら、世の中の分断はどこまで絶えることがないのかと途方に暮れてしまうばかりだと思います。

 

【読みたい本がありすぎる!本物の読書家さんへ】

安堂ホセ著『ジャクソンひとり』

小説『ジャクソンひとり』の物語は「ジャクソンズ」の物語ではなくて、結局「ひとりぼっちであるジャクソン」の物語であったのでしょうか。

 

ブラックミックスの男性と日本人の男性との境を、わたしはいま、明確に見出すことができません。

ブラックミックスの定義をあまりきちんと理解していないことが、この独自書評の中でブラックミックスの言い換えが一切出てこないことにも関係しているでしょう。

 

【あなたが本当に好みのコーヒー豆、わかってる?】

 

一方で、ビジュアルとして明確な違いがあるという事は、大きな違いに見えるのでしょうか。

見えたとしたら、感じることにもなるのでしょうか。

ジャクソンに対し序盤でひどい接し方をしてきた者たちに対する復讐がジャクソンズたちが企ててきたいたずらでじゅうぶん釣り合ったものになるとしたら。ジャクソンズはとても軽く扱われたものだなと感じます。

 

小説『ジャクソンひとり』はカテゴリやラベルではなくて、個人を見ることの難しさについていま一度、考えるきっかけとなるでしょう。

 

終わりに📚

いかがでしたか?

本日の独自書評では安堂ホセさんのデビュー作『ジャクソンひとり』をレビューしました。

 

安堂ホセさんはこの後がとても楽しみな作家さんだと思います。

これからもわたしの罪な面を数々と暴いてくださるのでしょうか。次回作もとても楽しみにさせていただきます。

 

【読みたい本がありすぎる!本物の読書家さんへ】

今日のブログはここまでにしようと思います。

日々たくさんの方に読んでいただけているようで、アクセス解析を見るのがとても楽しいです。

 

とても嬉しいです。どうもありがとうございます!

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以上、り📚書店員でした~!

 

 

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