『り📚書店員による小説のすゝめ』
こんにちは。り📚書店員です。
みなさまいかがお過ごしですか。
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今日の独自書評はこちら。
鈴木涼美さん著『グレイスレス』です。文藝春秋さんより刊行されています。
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『グレイスレス』こそ現代版おとぎはなし
素敵なおうちに住んでいて、文化的民度が非常に高い家族。
それはわたしの憧れです。現代版のおとぎばなしのようでした。
休日に家族と美術館や劇場へ行くこと。
それはいくつかの条件が揃わないと実現しないのではないでしょうか。
芸術的素養があること。アートに興味を持っていること。
休日がきちんとあること。
素敵なものを享受したいという気持ちの余裕があること。
娯楽に注ぎ込むお金の余裕があること。
おとぎばなしも、キラキラしたドレスを着た若い女性が主人公ですよね。
今作『グレイスレス』は主人公でこそないものの、小説『グレイスレス』中に登場する女優さんたちが綺麗に顔を塗り着飾っている構図はおとぎばなしをやはり連想しました。
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化粧師の主人公
化粧師の主人公は、ポルノ女優との距離をずっと測りかねているように見えました。
いちばんの見方でありたいのか、いちばん近くで虐げてやりたかったのか。
それはわたしが、ポルノ業界を肯定すればいいのか、なくしてほしいと嘆願すればいいのかわからない気持ちと似ているように思いました。
小説『グレイスレス』を読んで抱いた気持ちと似た揺れ動き方だと思いました。
正直わたしには、ポルノ業界で喜んで働く『グレイスレス』内の女優さんたちの気持ちはあまりよくわかりません。
ただ『グレイスレス』作中の女優さんたちは、若い女優さんやおもちゃ類に仕事を取られることを怖がっているのですよね。
どういう心境なのだろう、と不思議でした。
ポルノ業界を脱したいとは微塵も思っていない様子です。
お金の問題なのか。プライドなのか。
それとも単にお仕事を愛する気持ちなのでしょうか。
顔を塗るということ
どうしても崩れるはずの自分の顔にこだわりを持ち続ける女優さんたちの姿はわたしには見事なプロ意識に見えました。
主人公はなんと思っていたのでしょうか。
それともわたしと同じように、女優さんたちにリスペクトを抱いていたのでしょうか。
それとも、「ばかだなあ」と思っていたのでしょうか。
仮面をこれだけ思うままに作り上げる。
それは、心を閉ざしたり、距離を置いたりする行為として読むことができると思うのです。
では『グレイスレス』のポルノ女優さんたちは、何から距離を置きたがったのでしょう。
「ポルノ業界」、ではなさそうです。
例えば「現実の自分」でしょうか。
ポルノ女優という仕事は、『グレイスレス』の中ではきらきらとしたおとぎばなしなのではないでしょうか。
『グレイスレス』の中に登場する、ポルノ女優さんたちにとっては。
作家・鈴木涼美さんの誠実な筆致
多くの読者が言うように、とても誠実に丁寧にポルノ業界を書いてある小説です。
いやな偏見をきっと取っ払ってくれますし、曲がった目線を持つものにまっすぐぶつかっていく小説だと思います。
『グレイスレス』著者である鈴木涼美さんの、全女性に対するのあたたかな愛を感じたようでした。
とてもひりひりとして、同じ女性として悲しい気分になってしまうこともたくさんありました。
20代女性という自分の属性をこれほど刺激してくる小説にはあまり、出会ったことがありません。
この『グレイスレス』が芥川賞を受賞したら世界がすごいことになるのではないかなと思うほどでした。
実際には惜しくも『グレイスレス』は第168回芥川賞には届きませんでした。
しかしわたしの中での刺激の強さは今も全く衰えることありません。
しかるべき場所で『グレイスレス』が多大な評価を受けてくれますようにと願っています。
そして鈴木涼美さんという新人作家さんの今後のご活躍を大いに楽しみにしています。
わたしは『グレイスレス』ブレイクを狙いたいです。
鈴木涼美さんによる2作めの小説『グレイスレス』は、もっと多くの読者へ届くべき小説だと思います。
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ちなみに鈴木涼美さんの小説デビュー作はこちら。『ギフテッド』です。
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終わりに📚
今日のブログはここまでにしようと思います。
開設したばかりですが、思っていたよりたくさんの方に読んでいただけているようでようで毎日びっくりしています。
とても嬉しいです!
どうもありがとうございます!
始まって間もない小さなブログですが、どうぞよろしくお願いいたします。
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以上、り📚書店員でした~!
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