り📚書評家による小説のすゝめ

若手書評家、アートカルチャー系ライターをしています。り📚です。元書店員。独自書評や買った本の話、美術館や観劇の記録などをつけていきます。併設趣味ブログhttps://culture76.hateblo.jp/

書評 / 宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』

女によるR-18文学賞、成瀬の挑戦『成瀬は天下を取りにいく』

こんにちは。り📚書店員です。

みなさまいかがお過ごしですか?

 

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本日の独自書評はこちら。

宮島未奈さん著『成瀬は天下を取りにいく』をレビューします。

 

『成瀬は天下を取りにいく』は新潮社さんより刊行されました。

2023年の「女による女のためのR-18文学賞」受賞作です。

 

読者のフックとなるものは

話題を生む小説には必ず「読者のフック」となる何かの要素が含まれていると思います。

例えば驚きのラスト。

例えばとても美しく文学的な表現。

例えば心を揺さぶる大きな共感や痛みなどです。

わたしがこの『成瀬は天下を取りにいく』という小説を読んだときに、何よりのチャームポイントとなるのはその「主人公・成瀬のキャラクター」ではないかと思いました。

この『成瀬は天下を取りにいく』の主人公・成瀬が、読者を引き込んで離さないフックとなっているのではないかと考えています。

 

そんな主人公・成瀬は、エンタメ小説界の中でもニューヒロインを誇るようなキャラクターです。

曲者主人公

『成瀬は天下を取りにいく』の小説主人公・成瀬は、この上ないほど曲者のキャラクターです。

いかにもわが道を行くタイプ。

眉をひそめられても笑われても気にしない。

究極の思いつきから実行へと飛び込んでいってしまう。

さらに、幼少より様々なことで表彰されたり、評価をされたりといった経歴は、能力を持ち合わせていることを示します。

そんな女子高生が主人公です。

この主人公の成瀬のようなキャラクターは、周囲の人からの評価がぱっきりと2分することと思います。

成瀬のことがだいすきで、尊敬していたり、見上げている人。

対して、成瀬が何をするのも気に食わない、成瀬のことを嫌いになるタイプの人。

どちらもが成瀬の周囲にいるはずなのです。

 

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実際に小説『成瀬は天下を取りにいく』の中の登場人物たちでも、成瀬のことを「あの子変な子だよね」と言っている人物たちは少なからず登場してきます。

 

勲章を暗記する女子高生

成瀬は県で定められている勲章を暗記しているような女子高生です。

旅人に対してどのように接するべきか定められている勲章をそらんじて、その通りに行動すると宣言をしています。

曲者でありつつも、正義に突き動かされている成瀬。

 

変な人だけれど、悪い人ではないのです。

万人受けしない主人公が支持されるわけ

わたしが小説家さんであったなら、きっとできるだけ無難なことを書いて、できるだけ万人受けしそうな主人公を設定すると思うのです。

しかし、成瀬のような際立った主人公が存在し、支持されているのはどうしてでしょうか。

 

わたしは、「目の前にいないからこそ許せる要素」があるのではないかと思っています。

『成瀬は天下を取りにいく』の主人公成瀬のように、

変なしゃべり方で、

目立ちたがりで、

正義感が強く決して悪気がなくて、

でもいちいち目につくことをする。

 

そういった人物はもし目の前に「生身の人間」として存在したら、さまざまな印象を周囲に与えるでしょう。

しかし「小説の中の登場人物」、すなわち「フィクション」であった時には、その曲者っぷりはすべてプラスに転換されるような気がします。

 

面白がれるし、嫌悪感を抱きにくい。

それは他の映画やお芝居といったフィクションではなく、小説という余白の多いコンテンツだからこそより引き立つのではないでしょうか。

 

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できるだけ読者に好きにイメージをさせる。

そうした小説の良いところをたくさん詰め込んで、成瀬という主人公が生まれたのではないかと思っています。

 

膳所から来ましたゼゼカラです!

膳所から来ましたゼゼカラです」

これは主人公・成瀬と、その相棒がお笑いコンビを結成した時に生まれたご挨拶です。

文章で読んでいると、とても若者テンション。

何が面白いのか・・・と思ったそこのあなた。

ぜひ黙読でもいいので、心の中で「声に出して」みていただきたいのです。

 

ご挨拶として一度リズムを声に出して体感してみると、なんだかとってもハマるの、この「膳所から来ましたゼゼカラです」。

癖になる見事なキャッチコピーだと思いませんか。

 

青春叙述トリック

そんなゼゼカラ。

笑いの腕をどんどん磨いていく様子もまた、小説『成瀬は天下を取りにいく』の見どころです。

 

このふたりは名コンビのようでいて、意外とお互いのことをはっきり話し合っていません。

 

後半になるにつれ同級生からそれぞれの道へと進むゼゼカラ。

その身体的距離感に比例して、会話もまた目減りしていきます。

後半に進むにつれて、増加するのが「すれ違い」。

ここで名付けた「青春叙述トリック」です。

 

『成瀬は天下を取りにいく』は、そんな謎を隠していたのか!と、あっと驚かされる小説です。

終わりに📚

今回の独自書評では、「女による女のためのR-18文学賞」受賞作である『成瀬は天下を取りにいく』をご紹介いたしました。

いかがでしたか?

 

言語化の難しい独特な魅力に包まれたこの小説を、思い切って書評にしてみました。

ぜひ気になっていただけましたら嬉しいです。

 

宮島未奈さんの次回作をとても楽しみにしております。

 

今日のブログはここまでにしようと思います。

日々たくさんの方に読んでいただけているようで、アクセス解析を見るのがとても楽しいです。

 

 

とても嬉しいです。どうもありがとうございます!

 始まって間もない小さなブログですが、どうぞよろしくお願いいたします。

 

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以上、り📚書店員でした~!

 

 

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