書評 / 菰野江名『つぎはぐ、さんかく』

『り📚書店員による小説のすゝめ』

こんにちは。り📚書店員です。

みなさまいかがお過ごしですか？

本日の独自書評はこちら。

菰野江名さん著『つぎはぐ、さんかく』です。

つぎはぐ、さんかく

つぎはぐ、さんかく （一般書　411） [ 菰野　江名 ]

菰野江名さん著『つぎはぐ、さんかく』

菰野江名さん著の小説『つぎはぐ、さんかく』は第11回ポプラ社小説新人賞受賞作です！

ポプラ社さんが自信を持ってプッシュしている様子の『つぎはぐ、さんかく』。

かわいいおむすびの表紙イラストと、小川糸さんの帯コメントに注目です。

わたしもがんばってこの場に記事を書きますので・・・ぜひ参考にしていただけたら嬉しいです！

 

 

 

 

 

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香り沸き立つ「食」の描写

「照りが眩しいほど焼き上げたハニーマスタード味のチキン」

「炊き立てのごはんをふっかりと詰めていく」

『つぎはぐ、さんかく』を読み始めた読者はまもなく、このような描写で出迎えられます。

温度も香りも湧き立つ描写たち。

炊き立てごはんのほかほか。出来立てチキンのあたたかさ。

湯気に乗せられ漂う炊き上がったごはんの香り。照り焼きソースの甘辛い香り。

うっと〜り、してしまいませんか？

わたしが惹かれたのは「ポテトサラダ」です。

主人公たちが営むお店、「△」(読み：さんかく)の人気メニューのようですが、生のきゅうりと玉ねぎが入っていると描写があります。

私の家のポテトサラダには玉ねぎが入りません。

どんな風味がするのだろう？ととてもワクワクしました。一度作ってみようと思います。

あえて与えられない「役職」

「△」(読み：さんかく)でともに食事をし暮らす3人は、いったいどういう関係なのか。

エンタメ小説の序盤には、主人公の名前、登場人物の名前、そして2人の関係性がクリアに描写されることがとても多いかと思います。

『つぎはぐ、さんかく』では、2つの描写があえて取り払われているように思いました。

2つの描写とは。

敬称と、役職や肩書きです。

この3人は共に暮らしているっぽいけれど、親子なのかいとこなのか姉妹なのか。

それぞれを名前で呼び合い、しかも敬称をつけないことによってバリアが完璧に取り払われます。

どちらが年下か年上か。

つまるところ、どちらが偉いのか力関係が全く見えてきません。

とちゅう三者面談(実質の四者面談)の場面があり、担当の「先生」に向かって放たれる「姉」や「弟」ということばが出てきます。

この後に著者の菰野江名さんは、3人の関係性を明かしてくれるのかな…

と思いきや、また先ほどのシーンは嘘のように敬称も役職や肩書きも出てこないものがたり観へくるっと戻ります。

独特とも、潔癖とも捉えることができる『つぎはぐ、さんかく』のものがたり観。

けれどもここが見事だなあと感じるのですが、

『つぎはぐ、さんかく』のものがたり観は、読者に「どういうこと？！」という反発心を抱かせないのです。

「あなたたちは誰なの？」「なんなの？」

と思うことなく、時間をかけて、それでも見えてこなければまあいいかなと思わせてくれます。

敬称、役職、肩書きに縛られることこそおかしい？

人に勝手に授けられた敬称や役職、肩書きを疑問に思う経験は、あなたにはありませんか？

たとえば『つぎはぐ、さんかく』の中では。

ヒロさんが

「旦那さんにも(よろしく伝えてね)」

〜出典〜『つぎはぐ、さんかく』p20

と言われたことにもやもやしています。

晴太さんはヒロさんの「旦那さん」ではないからです。

(お店の店主を「だんなさん」と呼ぶこともありますが、『つぎはぐ、さんかく』では両者が「旦那さん」と漢字で発言して漢字で受け取るので齟齬はないように思えます。)

親子だと思って、恋人だと思って、

「〜さんにもよろしくね」

と言ってしまったものの誤りだったということは世に溢れていると思います。

どうしてこういう事が起きてしまうのか。

無意識に役職や肩書きを与えてしまう癖を見つめさせてくれるのが『つぎはぐ、さんかく』という小説ではないでしょうか。

グルメ小説のあたたかさ

重ねて『つぎはぐ、さんかく』にはほっこりとした食卓場面や食描写が多く、グルメ小説として確立している雰囲気のあたたかさがあります。

尖らずにまるっと包み込んでくれるような空気が1冊を通して常に漂っています。

そうしたあたたかくて、やさしい小説『つぎはぐ、さんかく』。

『つぎはぐ、さんかく』のグルメ要素こそ、読者に反発心を与えてしまう事なくフラットな目線で読み進めることを促してくれているのではないでしょうか。

あなたもぜひ『つぎはぐ、さんかく』を読んで、家族を模索し、ルーツを追う彼ら3人を応援してあげてください！

終わりに📚

いかがでしたか？

菰野江名さん著『つぎはぐ、さんかく』をご紹介しました。

つぎはぐ、さんかく

つぎはぐ、さんかく （一般書　411） [ 菰野　江名 ]

こっそりエンタメ小説部門、日本の小説部門のトップバッターに選出させていただきました『つぎはぐ、さんかく』です。

もう4月も終わりですね。

わたしは5月は、ライター副業が少しスローペースの受注になりそうでもやっとしつつ、たくさん小説を読みブログやSNS の下書きを作りたいなと考えています。

みなさまもきっと爽やかな5月をお迎えくださいね。

来週は書評をお休みして美術館評にチャレンジしようと計画中です！

今月は2つ、とても素敵な展示を見てきました。しあわせ〜！

今日のブログはここまでにしようと思います。

日々たくさんの方に読んでいただけているようで、アクセス解析を見るのがとても楽しいです。

とても嬉しいです！

どうもありがとうございます！

始まって間もない小さなブログですが、どうぞよろしくお願いいたします。

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以上、り📚書店員でした～！

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