り📚書評家による小説のすゝめ

若手書評家、アートカルチャー系ライターをしています。り📚です。元書店員。独自書評や買った本の話、美術館や観劇の記録などをつけていきます。併設趣味ブログhttps://culture76.hateblo.jp/

村上春樹『街とその不確かな壁』発売まで2日

『り📚書店員による小説のすゝめ』

こんにちは。り📚書店員です。

みなさまいかがお過ごしですか?

 

 

村上春樹『街とその不確かな壁』発売まであと2日

村上春樹さん新作長編『街とその不確かな壁』発売まであと2日となりました。

 

 

ファン読者としてはもちろん、

書評家・劇評家志望としては書評家さんたちの『街とその不確かな壁』評論や、

書店員としてはどれだけのお客様が『街とその不確かな壁』をお求めになるのか、

 

気になることだらけです。

 

今日のブログ『り📚書店員の小説のすゝめ』では、わたしが個人的に「村上春樹さんと似ている」と感じている作家さんを2人紹介します。

 

3名の作家さんとも、素晴らしく日本語の最先端を生むセンスがお有りなんです!

村上春樹さんと似たような「日本語の最先端を生むセンス」がある作家さんとは・・・

 

森見登美彦さんと伊坂幸太郎さんです。

 

作家・森見登美彦さん

森見登美彦さんは、村上春樹さんと同じく京都ゆかりの作家さんです。

エッセイやインタビューで京都のお話はよく出てきますね。

 

さらに森見登美彦さんは、「京都舞台の小説」もとてもたくさん書かれています。

 

例えば、『夜は短し歩けよ乙女』。

 

 

京都の大学生ってこんな感じか〜と、中学高校当時のわたしは思っていました。

 

 

『恋文の技術』も京都舞台の小説です。

 

 

 

「ラブレター」ではなくて「恋文」。

和歌の時代を思わせるような、かっちりと知的なお手紙なのか・・・と思えばがっくりと腰が抜ける思いです。

 

京都は世界中にファンの多い憧れのまち。

「いいなあ」というノスタルジー満載のモチーフです。

けれども京都の人がみんなみんな、これほどのんびりで抜けていておバカなわけは、ないような気がします。

 

京都の持つ「いいなあ」を小説なりに、最大限活かしてくるのが森見登美彦さんではないでしょうか。

 

わたしが今、森見登美彦さんの小説で気になっているのは『きつねのはなし』です!

 

 

きつね。

稲荷。

と連想して京都に辿り着いたのですが真相はいかがでしょうか。

 

小説『きつねのはなし』の表紙のイラストも、京都の小道を連想します。

 

 

森見登美彦さんの「日本語の最先端を生むセンス」とは。

まずひとつに、語感で遊ばれるのがとてもお上手なのではないかと思いました。

リズムがとても良いのです。

 

小説タイトル『夜は短し歩けよ乙女』など、繰り返していいたくなるほどの楽しさがありませんか?

 

村上春樹さんも、とてもリズム感の良い文章を書かれます。

小説の中で、「〜でも、〜でなくても」と肯定と否定を繰り返して同じ単語を繰り返す。

単語の三段活用のようにことばを展開していく。

 

別の意味のことばでも、コンスタントなリズムをついてこられます。

意図してテクニックとして行われているのでしょう。

 

 

作家・伊坂幸太郎さん

伊坂幸太郎さんは「どういった文脈で!?」というような面白おかしく突飛な展開が見どころではないでしょうか。

 

最近の新刊ではこちら、『マイクロスパイ・アンサンブル』。

 

 

 

何か運よく3つが揃えばドアが出現すると気がついた登場人物たち。

 

「運よく」「3つ」って、もう突飛な作家心が表れていると思いませんか?

 

その3つとは。

例えば・・・

 

猪鹿蝶!

 

もう笑ってしまって仕方なかったです。

どうして花札なんですか、伊坂先生。

花札をしている場面ではないんですよ。

屋外でたまたま猪と鹿を見かけて、蝶々がふらりと飛んでくるといった具合です。

 

叶いません。

 

ゴールデンスランバー』も文脈が不思議な面白おかしさがあります。

 

 

 

「どうしてそうなっちゃった?」という謎に不要なミッションを背負わされた主人公。

 

思いもよらぬ冤罪をかけられて、必死で逃げています。

そこで知り合う人たちとも数々のへんてこ劇を繰り広げるのですが・・・。

 

例えばあなた通りたい狭い道があったとします。

そこにちょっと悪そうな怖い若者がたまっています。

 

「うわー」

「頼んでも絶対どいてくれないや」

「通れそうにないや」

 

と思いませんか?

 

それがあっさり兄ちゃんたちが協力してくれるのが、伊坂幸太郎さんの小説なんです。

 

わたしが今、気になっている伊坂幸太郎さん小説は『クジラアタマの王様』です!

 

 

個人的には長編が好きです。没入できるので!

『クジラアタマの王様』も分厚い印象です。

伊坂幸太郎さんの小説にどっぷり浸る時間は恐ろしいようでとても楽しみです。

 

伊坂幸太郎さんの「日本語の最先端を生むセンス」とは。

いかにもことばを作る名手である点ではないでしょうか。

 

例えばわたしは初めての緊急事態宣言が発令された時、「自粛」ということばを初めて使った気がしています。

今までに聞いていても、辞書的な意味はきちんとわかったでしょう。

 

けれど使おうとは思ったことがなかった。

案外そういった日本語は多い気がします。

 

そうして時間ができた緊急事態宣言中に、伊坂幸太郎さんの既刊をたくさん読んでいました。

その小説の中に、「自粛」という言葉が出てきたのです。

 

びっくりしませんか?

 

コロナ禍前に、ナチュラルに「自粛」という言葉を使っていた方はいったい、どれくらいでしょうか。

マイナー日本語であった「自粛」が、政府のお達しにより日本で一番有名な日本語になった。

 

その様子を、「自粛」使い先駆けの伊坂幸太郎さんはどんな思いで見ていたのかな・・・と思っています。

 

伊坂幸太郎さんは新しい熟語の使い手でしょう。

村上春樹さんの日本語には、新しい接続詞の使い方が多く用いられていると思います。

 

新しいことばを生む作家たち

ことばは生きています。

ことばは日々、変化しています。

 

新しい言葉は、若者が作り、著名人やアスリートが作り、そして小説家が作ります。

 

ことば遊びのようにして、「小説ならでは」の世の中の見つめ方をしてみたり。

そもそもの「ことばの最先端」を走ったり。

小説家さん、特に文学賞系の小説や、純文学小説の書き手の皆さんには「日本語の最先端を生むセンス」が確かにあると思います。

 

今日は中でもずば抜けて「日本語の最先端を生むセンス」が高いのではないかと思う作家さんを3名紹介しました。

森見登美彦さん。伊坂幸太郎さん。そして村上春樹さん。

 

小説を読む時はぜひストーリー性のみならず、「ことば」そのものにも目を向けてみてほしいと思います。

 

作家・村上春樹さんの最新長編小説『街とその不確かな壁』は2日後の2023年4月13日発売です!

 

 

 

一緒に村上春樹さん最新作『街とその不確かな壁』を心待ちにしませんか?

 

終わりに📚

今日のブログはここまでにしようと思います。

昨日開設したばかりですが、思っていたよりたくさんの方に読んでいただけたようでびっくりしています。

 

とても嬉しいです!

どうもありがとうございます!

 

始まって間もない小さなブログですが、どうぞよろしくお願いいたします。

 

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ぜひフォローやいいねをしていただけたら嬉しいです!

 

 

以上、り📚書店員でした~!