劇評 / Noism Company Niigata「領域」『Silentium』『Floating Field』

『り📚書評家による小説のすゝめ』

こんにちは。り📚書評家です。

みなさまいかがお過ごしですか？

【おうちでエンタメ楽しんじゃおう】

本日の独自劇評はこちら。

Noism Company Niigataのダブルビル公演「領域」をレビューします。

（少し時間が経ってしまい申し訳ないです・・・）

noism.jp

Noismは何年も前から濃厚なダンス作品を楽しませていただいている、とてもお気に入りの舞踊団です。

コンテンポラリーダンスに興味のある方、新潟近郊のローカルアートに興味のある方にはぜひチェックしていただけたらとても嬉しい舞踊団Noism。

脳裏に映る映像を言語化したり、解釈を垂れ流したりしてみようかなと考えています。

舞踊家さんたちの踊りに深く触れるというよりも、演出解釈が主の記事となっています。

お楽しみいただけましたら幸いです。

Noism Company Niigataダブルビル公演「領域」

当公演「領域」は、

金森穣さん振り付けによるNoism0出演『Silentium』と

二見一幸さん振り付けによるNoism1出演『Floating Field』の2演目が発表されました。

個人的にとてもバランスが良いなと感じた2演目。

舞踊団の幹部ふたりによる新「領域」を見せつけてきた『Silentium』に対し、若いエネルギーがごく正しい形で爆発しているとても気持ちの良い自己肯定「領域」にある『Floating Field』。

この順で講演が構成されていた点も素晴らしと感じました。

それぞれ演目ごとのわたしなりの感想や見解を書いていきたいと思います。

これらはわたし個人の感想として、わたしの経歴によるものや所属を代表するものではありません。

『Silentium』振付：金森穣

Noismの創設より目玉ダンサーであり監督である金森穣さんと井関佐和子さんによるデュオ演目です。

邪気を払うために盛られた塩と、魂を葬るために灯された火

舞台の上に白い山がいくつも作られているところがまず視界に入ります。

下手側には火のついた蝋燭がひとつ。

この組み合わせに、仏の場を連想したのはわたしだけでしょうか。

邪気を払うために盛られた塩と、魂を葬るために灯された火に見えました。

金森穣さんと井関佐和子さんによるデュオ演目はこれまでのたくさん発表されていますが、どれも独立した作品であり、かつその時の彼らのためだけに生まれた作品ではないかというのがわたしの意見です。

今の彼らのためだけに与えられた（半ば自作自演ですので不適切な表現ではありますが）舞台が「邪気を払うために盛られた塩」と、「魂を葬るために灯された火」。

何かに別れを告げて、新しい領域へ足を踏み入れたことを自覚しているかのように感じました。

山型の白の正体はお米

踊りが始まり、まずは火のもとへ。そして白いものへアプローチをしていく中で、様々な情報が与えられていきます。

火を見つめる眼差しや、手の伸ばし方には、まるで見惚れている様なニュアンスが含まれている様に感じました。

そして手を差し出した上に降ってきた白はざあざあ音を立てる固体は、過去のNoism上演作品でも用いられたことのある白米ではないかと想像がつきます。

そう思い至った時に、わたしの中で『Silentium』の印象が一気に色を変えました。

冷たい仏の場だと思ったものは、新しい営みや命を祝福するものの様に見えてきたのです。

影と実像のように

比較的静謐な踊りで仕上がっている『Silentium』では、金森穣さんも井関佐和子さんも音楽の幕の上をたゆたうように踊ります。

基本的には男女のパートとなって、サポートとサポートされる側に分かれている構成ですが、半ばに同じ動きをふたりで辿る部分がありました。

プロの舞踊かになるずっと前から同じ場所で踊ってきているおふたりにとって、お互いの踊りは息をするようにわかるものなのかもしれません。

からだの大きさ。関節の作りとしなやかさ。身長と手足の長さ。

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いろいろなものが微妙に異なる男女のデュオで、しかし視覚的には影と実像のようにぴたりと重なる動きをされます。

視覚的に同じものを見せてくるおふたりのデュオでわたしが個人的にいつも楽しみにしているのがこの同じ動きをふたりで辿る部分です。

毎日同じ場所でお稽古をして、ともにひとつのメゾットや作品に向き合い続けてきたからこその見せ場なのではないかと思っています。

人間と人間が確実に違う人同士であるという圧倒的な事実を忘れさせてくれる瞬間ではないでしょうか。

『Floating Field』振付：二見一幸さん

『Floating Field』はNoism1メンバーの皆さんが踊る、二見一幸さんによって振り付けられた作品です。

自分の踊る場所は自分で作る

白いシャツに黒いジャケットとパンツで現れたダンサーたちは、とてもパリッとした印象を与えながら、観客の面前でリノリウムシートを広げていきます。

リノリウムシートは踊りのお稽古場でよく敷かれているシートです。

基本的にはお稽古場に敷きっぱなしにしていますが、舞台本番の日に劇場に仕込んでくれるのは舞台スタッフさんの仕事です。そして舞台仕込みは普通、会場よりもずっと前に済ませてあるはずの準備です。

しかし『Floating Field』では初めにひとりの舞踊家がリノリウムシートを蹴り広げ、その後は何枚ものシートを舞踊家どうして運び合い、踊りの途中で自分たちの思うままの形を構成してはまた別の形へ切り替えていきます。

ここにわたしはとても大きなエネルギーを感じました。

自分の踊る場所は自分で作る。

自分たちの踊りたい舞台は自分たちで選ぶ。

そうした「意志の強さ」を表現させるための振り付けだったのではないかなと考えています。

重ねて何度も形を変えるシートの形に自分たちの「順応さ」を誇っているような印象も持ちました。

おそらく振り付けを担当された二見一幸さんは、Noism1メンバーたちの「意志の強さ」と「順応さ」を感じ取り、せひ表現に加えたいと考えられたのではないでしょうか。

群舞でなく個の輝きあい

人数がある程度集まった舞踊演目でよくありがちなのが群舞構造です。

もんなで同じ振り付けを同じ様に踊り、その統一感を見せ場とする演出方法に当たります。

しかし『Floating Field』では人数は十分であったにもかかわらず、作品内にほとんと軍部はありません。

何パートかに分かれていて、小グループは君合わせを変えていきながらそれぞれに踊るスタイルが続いていきます。

これもまた「意志の強さ」と「順応さ」にあたるのではないでしょうか。

メンバーを入れ替えながら小グループで踊ったり、時にはひとり、ふたりで踊ったり。

その組み合わせの変化を見ているのはとても面白かったです。

先ほどはとても高いテンションで踊っていた舞踊家が周囲を変えると一変して繊細な動きを見せたり、

同性ダンサーと踊っていた時と異性ダンサーのデュオパートでずいぶん異なるテイストを見せる舞踊家がいたりと、とても個性的でした。

完璧な調和でここの領域を見つめる

個性がぶつかり合っているのではなくて、響き合っている様な感覚で、見ている人に一切反発させない調和が保たれています。

比較的年齢層の若い舞踊家集団のいまだからこそ見せることができた不思議な調和なのではないかなと感じました。

【おうちでエンタメ楽しんじゃおう】

それぞれの力を把握していて、自分の領域を見込んだ上で他者と溶け合い尊重し合うような作品だったと思います。

中には特別に上手な舞踊家さんも、とても目立った振り付けを与えられている舞踊家さんもいます。

しかし個性がぶつかり合っている印象が一切なかったのはとt目お興味深いなと思っています。

これがいまのNoism1の形なのかなと思えば「次回以降の公演もぜひ拝見させていただこう」と思った観客は多いかもしれません。

Noism Company Niigata次回公演「鬼」

更新が遅くなってしまったため、「領域」を見ることができなかった方も多いかと思います。

そこで、ぜひご紹介したいNoism次回公演も紹介させてください。

2023年12月から2024年にかけて、Noismがなんと4拠点ツアーを行います。

それがこちらの演目「鬼」です。

noism.jp

同じく新潟・佐渡島で活動する太鼓芸能集団鼓童さんとのコラボレーション演目が再演されるとの発表がありました。

新潟公演3公演、神奈川公演2公演、岡山公演1公演、熊本公演1公演が行われる「鬼」。

ぜひ当記事をお読みになってNoismに興味を持っていただいた皆さんには「鬼」をお楽しみいただけましたら幸いです。わたしも観に行きます！

終わりに📚

本日のブログではNoism Company Niigata「領域」『Silentium』と『Floating Field』のダブルビル公演について独自劇評をお届けしました。

いかがでしたでしょうか？

このブログも日々、たくさんの方に読んでいただけているようでありがたいです。

おかげさまでアクセス解析を見るのがとても楽しいです。

とても嬉しいです。どうもありがとうございます！

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