書評家・東 莉央の毎日書評

若手書評家、アートカルチャー系ライターをしています。り📚です。元書店員。独自書評や買った本の話、美術館や観劇の記録などをつけていきます。併設趣味ブログhttps://culture76.hateblo.jp/

書評 / 第175回芥川賞受賞しました!ちゃんと受け止めたよ、と抱きしめたい主人公の小説『ゾンビ回収婦』

こんにちは。り📚書評家です。

みなさまいかがお過ごしですか?

 

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わたしたちが生きているこの社会は、いったいどこへ向かって、これほどまでに猛スピードで走り続けているのでしょうか。

立ち止まることや、迷うことは、いつから「悪」とされるようになったのでしょう。

 

本日ひもとくのは、過去第169回芥川賞候補にもノミネートされた、小砂川チトさんによる衝撃的な最新小説『ゾンビ回収婦』です。

 

 

奇抜なタイトルからは想像もつかないほど、小説『ゾンビ回収婦』の根底には現代社会に対するひじょうに鋭利で、生々しいまでの問題提起が横たわっています。

小説『ゾンビ回収婦』はページをめくるたびに、まるで自分自身の喉元に冷たい刃を突きつけられているかのような、圧倒的なヒリヒリとした感覚を味わうことのできる傑作です。

 

息苦しさを抱えながら「いま」を生きるすべての人に向けて、この作品が突きつける強烈なメッセージを深く掘り下げていきたいと思います。

 

息継ぎを許さない、現代社会という名の怪物

小砂川チトさんによる小説『ゾンビ回収婦』は簡単にいうと不思議な主人公が不思議なことをする不思議な小説です。

 

「進化しろ」という呪いの言葉

「急げ、急げ、ミスすんな。改善しろ向上しろ発展しろ進歩しろ、死んでもミスんな、進化しろ」

 

小砂川チトさんによる小説『ゾンビ回収婦』の作中に登場するこの言葉の羅列を目にした瞬間、わたしは思わず息を呑み、「ああ、これは社会そのものだ」と強く感じました。

 

ひじょうに窮屈で、足元には無数の地雷が埋まっているかのように慎重に歩を進めなければならないのに、背後からは見えない何かに急かされ、ぐんぐんと背中を蹴飛ばされ続ける感覚。

現代を生きるわたしたちの多くが、この目に見えないプレッシャーを背負わされています。

 

わたし自身も、6月にコペンハーゲンでの激しい舞台リハーサルに参加し、そのままスウェーデンのヨーテボリへと契約のチャンスを掴むために駆け回っていたとき、まさにこの

 

「ミスをするな、進化し続けろ」

 

という強迫観念に常に背中を蹴り上げられていました。

 

自分の身体という資本を極限まで酷使し、周囲からの評価や、次々と入れ替わるトレンドのなかで、一瞬でも立ち止まればふるい落とされてしまう。

そんなヒリヒリとした焦燥感が、小砂川チトさんによる小説『ゾンビ回収婦』のなかには極めて高い解像度で描き出されています。

 

奪われる日常と、自己喪失への恐怖

社会のスピードが加速すればするほど、わたしたちの日常は脆くなります。

 

昨日まで当たり前だった価値観や、ささやかな安らぎの時間が、時代の変化という巨大な波にぽんと奪われてしまう。その抗えない暴力性が、ほんとうに怖いのです。

 

こんなにも息苦しくて、別にこころから好きになれるような世界でもないのに、適応できなければ生きていくことすらできなくなるという恐怖。だからこそわたしたちは必死に社会のシステムに同化しようと自分を殺し、感情をすり減らしていきます。

 

しかし過剰に同化を続けた結果、ふと立ち止まった瞬間に

 

「あれ、わたしは何がしたくて、何のためにここにいるんだろう?」

 

と、自分の輪郭すらわからなくなってしまう。その深い虚無感と喪失のプロセスを、小砂川チトさんは小説『ゾンビ回収婦』で見事なまでに抉り出しています。

 

この圧倒的なスピード感から一時的にでも逃れるため、わたしは先日、瀬戸内海に近い古い日本家屋に1週間ほどこもって、ただひたすらに本を読むだけの時間「読書泊」をして過ごしました。

あえて社会の時計から外れなければ、自分という存在が摩耗して消えてしまいそうだったからです。小砂川チトさんによる小説『ゾンビ回収婦』は、そんな「立ち止まることを許さない社会」の異常性を、強烈な皮肉を込めて描き出しています。

 

芥川賞候補作が放つ、怒りと失望の散弾銃

芥川賞候補となっている小砂川チトさんによる小説『ゾンビ回収婦』は、例えるなら散弾銃みたいな小説だと思います。

 

取りこぼしを許さない著者の視線

小砂川チトさんによる小説『ゾンビ回収婦』を読み進めていくと、次第に焦燥感が著者の筆をさらに加速させていくのがわかります。

 

まるで読者であるわたしたちの目線に対して、「絶対にこの現実を取りこぼすなよ」と強い圧をかけてくるかのような、凄まじい気迫がテキストの裏側から滲み出ています。

 

現代社会の不条理を前にして、多くの人が諦めや無関心を装うなかで、小説『ゾンビ回収婦』の文章には、決して目を逸らすことを許さない「いちどきりの情熱」が宿っています。それ、冷笑主義が蔓延するいまの時代において、ひじょうに貴重で、そして切実なエネルギーです。

 

破壊的な言葉が浮き彫りにする「ほんとう」の姿

そしてこの書評のなかでどうしても触れておきたいのが、著者が選択する極めて破壊的で、痛覚を直接刺激してくるような言葉の数々です。

 

「ぐちゃぐちゃのペースト状」

 

「木っ端微塵」

 

「ジャムのように崩れた顔」

 

これでもかというほど、人間の形や尊厳を無残に打ち砕き、グロテスクなまでに変容させる言葉たち。しかしそれらの言葉は決してただ読者を不快にさせるためや、猟奇的な興味を惹くために使われているのではありません。

 

たんたんと、しかし確実に弾を撃ち続けるように放たれるこの文体は、狂ってしまった社会に対する著者の深い「失望」、そして次なる時代へと向けられた激しい「怒り」そのものを表しているように思えてなりません。

 

わたしたちが普段、綺麗な言葉でラッピングして見えないふりをしている社会の歪みや、労働によってすり潰されていく人間の尊厳。

それらを「ぐちゃぐちゃのペースト状」にして読者の目の前に叩きつけることで、著者はわたしたちに

 

「これがほんとうの世界の姿だ」

 

と突きつけてくる。

 

小砂川チトさんによる小説『ゾンビ回収婦』は、読む者のこころに決して消えない深い爪痕を残す、劇薬のような小説です。

 

しあわせの定義が揺らぎ、何が正解かわからないいまの時代に、これほどまでに強烈な問題意識と、文学としての圧倒的な強度を持った作品に出会えたことを、一人の読者としてひじょうに嬉しく思います。

素晴らしい小説を、ほんとうにありがとうございます。

 

この作品が気になる人に合わせておすすめしたい書評

小砂川チトさんによる小説『ゾンビ回収婦』の書評を楽しく読んでくださった方に併せておすすめしたい、自身の書評をご紹介します。

 

-児童文学からはこちら。『フラミンゴボーイ』の書評です。

books76.hatenablog.com

 

-大好物!芥川賞候補からは『海岸通り』をレビューしました。

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-翻訳小説は『アリとダンテ、宇宙の秘密を発見する』

books76.hatenablog.com

 

-セルフケアに関心のある方は夏に向けてこちらを読んでみませんか?

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物語の余韻を、手元の慈しみとアールグレイの香りに変えて

本日ご紹介した作品はいかがでしたでしょうか。

芥川賞候補おめでとうの気持ちを込めて、小砂川チトさんによる小説『ゾンビ回収婦』の書評を公開しました。

 

 

小説『ゾンビ回収婦』の物語のなかに深く潜り込み、たくさんの言葉を体内に吸い込んだあとの読後の時間は、ひじょうに愛おしく、そしてどこか切ない余韻に満ちています。

 

ページを閉じたあとも、こころのなかに残るかすかな温度をそのままに、自分だけの静かな時間へと着地していく。 そんな読書という素晴らしい体験を、さらに深く、そして現実のあなたの暮らしへと優しく定着させるために、わたしが毎日の習慣にしている小さな秘密があります。

それは1日の終わりに本を閉じたあとのわずか10秒間、自分の手元を「極上の美容液」と「アールグレイの香り」で満たしてあげることです。

 

キャンドルのように灯る、夜の書斎のラグジュアリー

ベッドサイドにそっと置かれた、透明で洗練されたガラス瓶。

そのなかにぽってりと入ったみずみずしい白いジェルは、まるで夜の暗闇に上品に佇む、おしゃれなアロマキャンドルのようです。

ただそこに置いてあるだけで、自分の部屋がほんの少しだけ特別な空間になったような気持ちになれる。

 

1日の終わりにその蓋を開ける瞬間は、今日をがんばって生き抜いた自分へ贈る、最高の「ご褒美ナイトケアsirojam(シロジャム)」の幕開けです。

 

「油でフタをする」のではなく、「水分を深く浸透させる」新常識

ページをめくる指先や、ペンを握る手元は、物語の世界とわたしたちを繋ぐもっとも大切な橋渡しです。けれど一般的なハンドクリームの多くは、実は肌の表面に「油分のフタ」をしているだけだということをご存知でしょうか。

それでは水分は補給されず、根本的な乾燥や、年齢とともに気になり始める手元の疲れを癒やすことはできません。

 

わたしが愛用している「sirojam(シロジャム)」は、クリームではなく、手のためだけに開発された高機能な「手の美容液(ハンドセラム)」です。

水分をたっぷりと含んだぷるんとしたジェルが、肌に触れた瞬間にすーっと溶け込み、表面をベタつかせることなく、角質層の深いところまで確かな潤いと、浸透ナイアシン処方の贅沢な美容成分を届けてくれます。

 

アールグレイの香りに包まれる、寝る前10秒の「整い時間」

とくに愛おしいのが、手元からふわりと立ち上る「アールグレイ」の芳醇で深い香りです。

 

本を閉じ、おだやかな眠りにつく前のたった10秒間。

みずみずしい美容液を手になじませ、手のひらで顔をそっと覆うようにして深呼吸をすると、まるで高級なサロンであたたかい紅茶をいただいているかのような、贅沢で深いリラックスタイムへと誘われます。

 

いつまでもベタベタと残らないからこそ、塗ったあともすぐに愛しい本に触れたり、スマートフォンを開いたりできるのも、夜の時間を大切にするわたしたちにはひじょうに嬉しいポイントです。

 

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五感で味わう、これからの読書スタイル

読書の記憶というものは、時間とともに少しずつ薄れてしまう脆いものです。

しかしそのとき一緒に感じていた「香り」や「手触り」の記憶は、何年経っても脳の奥底に残り続け、ふとした瞬間にあの愛おしい感情を鮮烈に呼び覚ましてくれます。

 

いまあなたが抱えているかもしれない仕事の悩みや、生き方の迷い。それらを本という鏡を通して見つめ直したあとは、どうかそのがんばったこころと手元を、このやさしいアールグレイの香りと上質な潤いで包み込んで、自分自身を優しく労わってあげてください。

 

整えられた肌と、満たされたこころから、また明日をほんとうの自分で生きるための新しいエネルギーが湧き上がってくるはずです。

 

今夜のあなたの読書時間が、美しく、そして香り高いしあわせなひとときになりますように。

 

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【お知らせ💐】

書評家のわたしが読書会×読書泊をプロデュース予定です!

わたし史上初のオフ会になります。

 

初回のこの夏のイベントでは芥川賞直木賞の読書会を行い、同じ釜の飯を食べて、自然豊かな山の上の日本家屋で本の話をする時間をご用意中。

そのほか愛読書や本のことばかりでなく、ライター・書評家の仕事についてもNGなしでお答えします!

 

地元のおいしいおいしいお米とお魚を用意してお迎え。

情報公開をお楽しみに。ぜひ会いにきてください!

 

※先着12名、2日間の予定です

 

ニュースレター「the Letter」も執筆しました!

books-76.theletter.jp

 

www.kodansha.co.jp