り📚書評家による小説のすゝめ

若手書評家、アートカルチャー系ライターをしています。り📚です。元書店員。独自書評や買った本の話、美術館や観劇の記録などをつけていきます。併設趣味ブログhttps://culture76.hateblo.jp/

書評 / クノタチホ『コンプルックス』

大切な人の愛し方を2人のセラピストが教えてくれる小説『コンプルックス』

こんにちは。り📚書評家です。

みなさまいかがお過ごしですか?

 

本日の独自書評はこちら。

クノタチホさんの小説『コンプルックス』をレビューします。

 

クノタチホさんはInstagramなどのSNSで多くのファンを獲得する心理学、恋愛心理学の発信者さんで、プロフェッショナルのセラピストさんです。

著者多数のクノタチホさんが今回は小説を出版されました。ぜひチェックをお願いします!

 

女性のルックスコンプレックス

美貌には果てがありません。

世界でいちばん美しい人を教えてくれる鏡はありませんし、自分の顔に美を追求し始めたらきっと尽きることなく気になる点が出てくるでしょう。

 

生まれ持ちの要素が強いのもまた事実。

そうした難しいルックスのコンプレックスを主題に取り扱ったのが今回の『コンプルックス』という小説です。

 

『コンプルックス』のナルシスの鏡

婚活市場で負け続けるのは自分の顔がいけないと悔しがる女性。

マスクの上までは美しいのに顎だけ気になる女性。

コンプレックスに悩む女性たちがたどり着く「ナルシスの鏡」は、自分の外見に絶望しきった女性たちへ66日間の夢を見せてくれます。

 

理想の自分。あらゆる男性を虜にする自分。すれ違う人たちの注目を浴びる自分。

はじめ顔面のコンプレックスが解消されるとこんなに世界は違うのかと驚く女性たちでしたが、束の間の夢の世界でもうまくいかない出来事にぶち当たるようになりました。

 

これらの出来事が教えてくれるのは、彼女たちの悩みは外見だけが原因だけではないということです。

 

こころの専門家・クノタチホさんらしい筆致

鏡の外の世界と、夢の中の世界。

それぞれの世界で、悩める女性たちに寄り添う人々が登場します。

時に恋人、時に友人。

また行きつけのお店のスタッフさんや同業者なこともある寄り添える人たちとの言葉のキャッチボールは、読んでいてとても気持ちがよいものです。

 

自分の意思をきちんと伝えつつも、Yes andの姿勢を崩さない彼女たち。

 

そうだね。でも、こうとも言えるんじゃない?

そうかもしれないね。けれどそれって必ずしも悪いことかしら。

 

このような丁寧な会話は、なかなか繊細に相手を気遣わなくてはできないものだと感じました。

心理のプロフェッショナルであるセラピスト・クノタチホさんにしか書くことができない小説パーツのうちのひとつかと思います。

 

そして、これらの丁寧な登場人物たちは「顔面のコンプレックスがあってもなくても相手をきちんと尊重している」ことを表しているとわたしは感じます。

 

心理士の女性・有野愛菜

小説『コンプルックス』の後半には、著者のクノタチホさんと同様にこころの専門家である女性が登場します。

物語のバトンを引き継いでいく心理士の女性・有野さんは「これさえなければ」完璧な美貌の持ち主であるとして、悩んでいる女性です。

 

ある大きな打撃をきっかけに、顔の一部を修正してしまえばあっという間に人生が変わるのかもしれないと思いかける有野さん。

しかし彼女はそれまで「ありのままの自分」を受容し愛すことをモットーとして発信をしていた心理系ブロガーでした。

 

コンプレックスと受容

生まれ持った自分の顔を受け入れて愛すこと。

それが彼女のコアなはずです。

しかし矛盾が生じ始めた自分のこころをうまく認識できず、こころの専門家としても、女性としても悩んでしまいます。

 

とても気の毒な事象にぶち当たってしまう有野さんの姿を、眉尻をさげて読み進める読者も多いことでしょう。

 

デジタルデバイスルッキズム

近年のルッキズムの影に、デジタルデバイスSNSの発達が影響している可能性はしばしば示唆しれます。

 

つまり、オンラインで自分の方にコンプレックスを抱えたままの女性が「ありのままを愛すつ」重要性を発信することには、大きな意味があるでしょう。

そこから気の毒な事象をどう吸収して、有野さんが発信者として、女性として、そしてこころのプロとしてどう進んでいくのかという流れには、想像以上の気づきを与えてもらいました。

 

ものはいいよう / 小説『コンプルックス』

自分に蓋をしてしまうことや、自分の理屈に囚われてしまうことを忘れてみる。

同じひとつのコアであっても、捉え方次第で内容は真逆の意味になります。

もしコンプレックスを、真逆の「すばらしい宝物」として認識することができれば、あなたの人生は想像以上に光り輝くのではないでしょうか。

 

小説『コンプルックス』が読者に与えるもの

素敵な考え方がたくさん登場する小説『コンプルックス』で、さまざまな思考法をキャッチしてみてもたのしいと思います。

素敵な一文にたくさん出会うことができましたが、わたしがとくに素晴らしいと思ったフレーズは小説内の375ページに登場します。

 

きっとこころに響くフレーズは?

コンプレックスがあるならば

という言葉にはじまる一文です。

 

有野さんの行動に関するネタバレを避けるため、この素晴らしいフレーズをこの場で紹介することは避けようと思います。

ぜひあなたも小説『コンプルックス』で登場人物たちの過程を読み進め、ラストにこの素敵なフレーズに出会ってくださいね。

意味合いを深く理解するために、飛ばし読みは厳禁ですよ!

 

 

細やかなこころの描写に触れる小説『コンプルックス』

小説の筋もどきどきはらはらな『コンプルックス』ですが、多くの小説家さんにも、多くの心理士著者さんにも書くことができなかった繊細な描写が多いこともまた魅力です。

 

小説の中に組み込まれた心理的コミュニケーションは、先述のYes and話法だけではありません。

数多くの魅力の中から、ここでは小説『コンプルックス』の前半部分を抜き出して紹介したいと思います。

 

『コンプルックス』の前章として、ナルシスの鏡が世間に認知されるようになったわけが説明されています。

ナルシスの鏡が話題となったのは、ある1人の歌唱力が素晴らしい女性アーティストが、歌は美しいのに顔が残念だと世間に叩かれてしまったことがきっかけのようでした。

 

いい人の迷惑

そんなひどく悲しい出来事をなんとか乗り越えた女性アーティストは、今度は母のありがた迷惑に触れることとなります。

女性アーティストのお母さんはアウティングのごとく、会う人会う人に娘の顔面コンプレックスが解消されたわけを話してしまうのです。

 

その部分を引用します。

 

岡山真昼の母親はとても人柄がよくオープンハートな性格で、ついつい話さなくても良いことや話さない方が良いことを人に話してしまう癖があったのだ。

(中略)

嬉しくてつい、お隣の木村さんや向かいの家の永井さんへ。

嬉しくてつい、いつも買い物に行って長話をする近所のコンビニのオーナー夫婦へ。

嬉しくてつい、岡山真昼の実家のある上野の近所の住人たちへ。

散弾銃のように、岡山真昼の秘密をばらまいていく彼女の母親。

岡山真昼は苦笑いをするしかなかった。

 

「オープンハートな性格」に「嬉しくてつい」の重なりは、悪気のないアウティングをよく描写していると感じました。

 

『コンプルックス』の2つの描写が教えてくれること

わたしが一部引用をしたこの2箇所の描写は、「大切な人をいかにして愛すべきか」ということを読者に教えてくれるのではないかと思います。

 

ほんとうに大切な人ならば、口にしない苦しんでいることも察する靴ができるかもしれません。

ほんとうに大切な人ならば、あらゆる面を愛おしいと感じられるかもしれません。

ほんとうに大切な人ならば、ほかの人との接し方以上に深く気にするべき部分もあるのかもしれません。

 

大切な人をいかにして愛すべきか

あなたはあなたの大切な人をどれほど愛していますか?

このような接し方や愛し方を知っていますか?知っていると、よりよい関係を築けるかもしれませんよ。

 

そう、読者にそっとヒントを与えてくれるような小説だと感じました。

 

終わりに📚

今回の書評では、クノタチホさんの小説『コンプルックス』をレビューしました。

いかがでしたか?

大切な人をより大切に愛したいすべての方におすすめしたい小説です。気になる方はぜひチェックをお願いします!

 

このブログも日々、たくさんの方に読んでいただけているようでありがたいです。

おかげさまでアクセス解析を見るのがとても楽しいです。

 

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以上、り📚書評家でした~!

 

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