一人称小説『喫茶おじさん』で喫茶文化を味わう冒険を。
こんにちは。り📚書評家です。
みなさまいかがお過ごしですか?
【もっと効率よく読書したい本物の読書家へ捧ぐ革命】
本日の独自書評はこちら。
『喫茶おじさん』をレビューします。
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こちら刊行後続々重版中の小説です。ぜひチェックをお願いします!
- 一人称小説『喫茶おじさん』で喫茶文化を味わう冒険を。
- アラビカ種の豆ですか?
- 否定されたような主人公
- 読者に胸の内を隠す『喫茶おじさん』の主人公
- ラストで初めて明確になる主人公像
- 隣の畑が青くても
- 『喫茶おじさん』おすすめシチュエーション
- 終わりに📚
アラビカ種の豆ですか?
「このブレンドに使われているのでは アラビカ種の豆ですか」
【自分好みのコーヒー、ちゃんとわかってる?】
このなんとも秀逸な書き出しに始まる小説『喫茶おじさん』は、主に東京の喫茶店を巡る喫茶おじさんこと主人公・松尾さんの喫茶めぐり回顧録のような小説です。
おひとり様喫茶ともなれば、よほどの喫茶好きなのでしょう。
主人公が設定したライフハック
そう思い込んで読んでしまったために、趣味は喫茶めぐり「ということにしている」といった主人公が自身に課した設定には驚きました。
ともなればリタイア後世代の自分探しや趣味探しのあれかな?と思うも、また少し事情が違うようであると、読み進めていくとわかるようになっている『喫茶おじさん』。
【人は、香りに導かれる】
実際には悠々自適の退職後でもなく、無理な趣味探しでもなければ、ほんとうは喫茶店にものすごく興味があるも向き合えないだけの主人公の小説なのです。
【もっと効率よく読書したい本物の読書家へ捧ぐ革命】
否定されたような主人公
主人公がひとりで喫茶めぐりをしながら、昔の同僚や家族などたくさんの人と会って会話していく小説『喫茶おじさん』。
さまざまな登場人物たちは松尾さんに、みな同じことを主人公に言っていきます。
「あなたは本当に何もわかっていない」と。
【自分好みのコーヒー、ちゃんとわかってる?】
何をわかっていないのか?
娘に、友達に、昔経営していたお店のバイトに、喫茶店学校の同級生に。
「何もわかっていない」と言われ続ける主人公。
そして主人公の松尾さんは、その意味をわかっていないのにも関わらず一度もその発言の詳細を尋ねることができません。
娘にすら尋ね返すことができなかったのです。
【人は、香りに導かれる】
しかし自分でわけをわかっているということもなく、みんなが自分の何にそんなに不満なのか混乱してしまっている要素さえ見受けることができます。
過剰なブルーにふさぎ込む主人公の小説『喫茶おじさん』
この時の主人公の心情はきっと「否定されている」といったブルーなものだったのではないでしょうか。
尋ね返すこともできないほど落ち込んでしまっているのだろうと推測することができ、とてもかわいそうだなと感じました。
【日本に「おいしい紅茶」を届けるお店】
読者に胸の内を隠す『喫茶おじさん』の主人公
そしてこの主人公は、小説の地の文にもあまり感情を露わにしません。
読者の我々には、地の文に現れてこない主人公の様子を見ることができないのです。
わたしたちは叙述トリックのような隠しごとをされたまま『喫茶おじさん』を読み続けることとなります。
そのため、主人公が何を「わかっていない」と責められているのか、わたしたち読者にも明確に伝わってこないのです。
【自分好みのコーヒー、ちゃんとわかってる?】
主人公に同情する読者
何度も同じことを言われながら喫茶店を練り歩き、再就職に向けて心を砕く様子は、苦労ばかりのようで少し胸が痛みました。
周りの人に当たられてしまったり、ひどいことを言われているような気がした場面では、主人公のことをとてもかわいそうだと気の毒に感じました。
しかし他者から主人公はどのような人物だとして認識されていたのかがわかる終盤に、多くの読者が「読者としての自分の立ち位置」がからりと変化することをきっと体感することでしょう。
【もっと効率よく読書したい本物の読書家へ捧ぐ革命】
ラストで初めて明確になる主人公像
主人公が何を「わかっていない」と責められているのか、人にやっと聞くことができるのは小説『喫茶おじさん』のごく終盤です。
ここで初めて、主人公像が明確になります。
これまで気の毒な人だと思っていた主人公が、実はどのように周りに認識されていたのか。
それを知った場面は衝撃的な境目でした。
まるっと立場が逆転した心地です。
自分も主人公に対し、「あなたは何もわかっていない」と言っている側の人間になってしまったような気がしました。
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隣の畑が青くても
実際にわたしには、自分がしている苦労をしていない人や、お金や家庭にものすごく恵まれている人を見ると、ちょっぴり嫌な気持ちになってしまう経験が多くあります。
そうした自分を認識しているからこそ、小説『喫茶おじさん』の主人公の見え方が急激に変化してしまいました。
このとても現金な主人公解釈には、自分でも驚くばかりです。
一人称小説だからこそ書き上げることのできた視界の転換ではないかと思っています。
【日本に「おいしい紅茶」を届けるお店】
視界を転換させる一人称小説
もちろんどんなに恵まれているからといって、主人公が嫌な人であるわけではありません。
主人公自身がいろいろなことに悩んでいるのもまた事実です。
『喫茶おじさん』の読者には、そのことを念頭に置きながら両者の立場をぜひ楽しんでいただきたいと思いました。
【お得にたっぷり読書しよう】
『喫茶おじさん』おすすめシチュエーション
最近は1つ大きく世界情勢が動き、大きな事件があったりと動揺する日々が続いていますね。
悲しいニュースをキャッチしてしまった日に、わたしは喫茶店を舞台としたとてもあたたかな物語をいくつも繰り返し読みたくなりました。
そして、その喫茶文学連読の1つに、こちらの『喫茶おじさん』を選びました。
【自分好みのコーヒー、ちゃんとわかってる?】
喫茶巡りのような小説『喫茶おじさん』
わたしも喫茶店がだいすきで、1人でお気に入りのお店をよく訪れています。
喫茶めぐりを趣味にしようと改めて意気込んだことがないのですが、「モーニングを食べるときの喫茶店」と「コーヒーを飲み比べるときの喫茶店」は、自分の中で少し位置が違うことはなんとなく感じています。
【人は、香りに導かれる】
あんバタートースト
『喫茶おじさん』内のあんバタートーストの章が特に素敵だなと思いました。
喫茶店のあんバタートーストを食べたくなるシーンには、なぜだか一貫した心理性があると思っています。
ちょっと自分をいたわりたい時や、ちょっと自分にご褒美をあげたいとき、人は喫茶店のサクサクとした完璧なトーストの上に乗せられたバターとあんこのマリアージュを欲するのだと思います。
バターのようにじわじわとしみてくる特別お気に入りの章でした。
【自分好みのコーヒー、ちゃんとわかってる?】
バタークリームのショートケーキ
もうひとつ『喫茶おじさん』を語る上で喫茶店好きが外したくないポイントはバタークリームのケーキです。
バタークリームのケーキが流行していた時代があったのですね。知りませんでした。
そしてバタークリームにはあまり馴染みのない世代であるわたしは、このケーキの味を何度も何度も想像しています。
いつか食べてみたいです。きっとコーヒーにすごく合うと思いませんか?
自分が糧に創造したどの味と、いちばん似ているでしょうか。
濃厚な時間を楽しむことができる章だと思いました。
甘いものがお好きな方や、ひとりグルメ歩きがお好きな方にはとっても楽しい読書時間となること間違いなしの小説です。
【日本に「おいしい紅茶」を届けるお店】
終わりに📚
今回の独自書評では『喫茶おじさん』をレビューしました。
いかがでしたか?
読者の方に喫茶店巡りがお好きな方がたくさんいらしゃたらいいなと思いながら執筆しました。
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今日のブログはここまでにしようと思います。
このブログも日々、たくさんの方に読んでいただけているようでありがたいです。
おかげさまでアクセス解析を見るのがとても楽しいです。
【お得にたっぷり読書しよう】
とても嬉しいです。どうもありがとうございます!
始まって間もない小さなブログですが、どうぞよろしくお願いいたします。
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以上、り📚書評家でした~!
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