映画評 / 『岸辺露伴ルーヴルへ行く』

『り📚書評家による小説のすゝめ』

こんにちは。り📚書評家です。

みなさまいかがお過ごしですか？

本日の独自映画評はこちら。

『岸辺露伴ルーヴルへ行く』をレビューします。

映画評論は久しぶりですが、思い切って話題作『岸辺露伴ルーヴルへ行く』を選んでみました。

『岸辺露伴ルーヴルへ行く』はコミックでもノベライズでも、映画でも楽しんでいただける作品です。

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ぜひ当記事を読んで興味を持っていただき、お好みの方法で楽しんでいただけますとうれしいです。

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岸辺露伴が縛られているのは、1枚の絵

主役である岸辺露伴は昔、ある女性に教えられた伝説の「黒い絵」のことが気になって仕方ありません。

時にふわりと思い出し、オークションで黒い絵を高額で落札してしまう漫画家・岸辺露伴。

その黒い絵の伝説を岸辺露伴に教えた女性がどういった人物なのかも、明かされないままに、 わたしたちは岸辺露伴に連れられて、伝説の黒い絵探しの旅に出ることになります。

目指す先は、パリ、ルーヴル美術館です。

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女性のくだらなくてすごく安っぽい行為

「この世で最も黒い黒って、知ってる？」

岸辺露伴にその最も黒い絵のことを教えた女性が、かなり印象的な取り乱し方をするシーンがあります。

漫画家を目指す若き岸辺露伴はその女性に惚れ込んで、その女性の絵を何枚も描きました。

嬉々として本人へ見せると反応は思っていたものとは全く違います。

その女性はハサミを立てて岸辺露伴が描いてきた絵を切り裂きながら、このように話します。「重くてくだらない。くだらなくてすごく安っぽい行為！」と叫ぶのです。

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そんなことを言いながらだだをこねて絵を切り裂くことしかできないこの女性のやっていることそのものが「くだらなくてすごく安っぽい行為」です。

映画全般を通して岸辺露伴がとても素敵な推理で物語を進めていく『岸辺露伴ルーブルへ行く』において、このくだらなくて安っぽい行為はとても印象的です。

あまりに幼い子の描写。

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しかし、このくだらなく、安っぽい行為が素敵な哲学映画『岸辺露伴ルーブルへ行く』の足を引っ張っているとはわたしは思いませんでした。

むしろこの映画の知的な部分をより、演出しているのではないでしょうか。

映画『岸辺露伴ルーブルへ行く』の登場人物たちが終始一貫して重要視しているのは「見る」という行為です。

彼らはこれから、この世で最も黒い絵を見て、何かと対峙しなくてはいけません。

そのことをわたしたち視聴者に「ビジュアル的に」伝えるべく、くだらなくて安っぽいことを言いながらくだらなくて安っぽい行為をして取り乱す女性が必要だったのではないでしょうか。

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あまりに惨めなその姿を言葉だけでなくわたしたちに「見せる」ことで、「見る」ことの重要さや、「見た」ことが強烈な記憶となって残るその作用を、身をもって体感させているのではないかとわたしは考えています。

光を吸収するこの世で最も黒い絵

『岸辺露伴ルーブルへ行く』という映画の中で、何よりも面白い哲学が「黒」の扱いではないでしょうか。

鏡は光を反射し、よってすべてのものを写します。

一方で、この世で最も黒い絵は、あなたに何を見せるのでしょうか。

あなたの何を映し出すのでしょうか。

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『岸辺露伴ルーブルへ行く』においてこの世で最も黒い影が映すものとは、一体なんなのでしょうか。

映画『岸辺露伴ルーブルへ行く』の中で伝説の最も黒い絵に対峙した者たちは、危険な混乱の中へと陥ってしまうことになります。

その様子を見た岸辺露伴は、黒を以下のように考察するのです。

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黒は光を吸収する。この世で最も黒い黒は、この世で最も光を吸収する黒である。

そのこの世で最も黒い黒が見せるものとは、己の過去や後悔である。

その者の光をすべて吸収してしまい、そのものの暗く醜い面を見せるのだと。

映画『岸辺露伴ルーブルへ行く』は原作が集英社のジャンプコミックスであることもあって、実際とても漫画的な映画となっています。

カメラの視点がころころと計画的に変わり、最も黒い黒を見ているもののことを詳しく映してくれません。

これは小説でいうところの叙述トリックにあたるものでしょう。

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自分が見ることができず、視線をうまく惑わされたその先で起こったものを、視聴者・読者終盤まで教えてもらうことができないという構造です。

そうした叙述トリック的視点の動かし方は、映画『岸辺露伴ルーブル行く』において、視聴者にこの世で最も黒い黒が自分に問うものは何かを考えさせてくれるきっかけになります。

一方で視聴者・読者とは異なり実際にその場にいたはずの岸辺露伴とその助手さえも、どうしてだかその様子を見ることができなかった、

もしくは理解することができなかったという形になっています。

「あなたたちはその場にいたのだから見ていたはずでしょう」という不自然さは残る形といえるでしょう。

映画『岸辺露伴ルーブル行く』は原作がコミックおよびノベライズであるということを念頭に置いて見るべき映画ではないでしょうか。

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画家・仁左衛門と岸辺露伴の間柄

ルーブル美術館から日本へ戻ってくるあたりで、物語の概ねを伝えられる視聴者が次に気になるのは「画家・仁左衛門と漫画家・岸辺露伴の関係」ではないでしょうか。

わたしは初め、岸辺露伴の前世なのかなと思いました。

岸辺露伴は前世でも絵の才能を以ており、絵を描いて生活していたのではないかと考えました。その当時のことがこの世で最も「黒い絵」を前にして自分に降りかかってきたのではないかという考えです。

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その次に考えった可能性は、岸辺露伴の先祖にあたる人物の中に仁左衛門という画家がいたのではないかというものでした。

しかし、映画『岸辺露伴ルーブル行く』真相はどちらでもありませんでした。

結果的には2つ目の考察に当たるかもしれませんが、わたしの考察よりももっとずっと深く物語を回収しています。

これはとても面白い結末でした。

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仁左衛門とは岸辺露伴の前世ではなく、直接の血筋でもなくて、しかし岸辺露伴に偉大な才能を与えた偉大な人物でした。

岸辺露伴を漫画家にしたのは、この仁左衛門という画家だったのかもしれません。

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終わりに📚

今回は『岸辺露伴ルーヴルへ行く』の映画評をお届けしました。

いかがでしたでしょうか？

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2023年12月現在『岸辺露伴ルーヴルへ行く』は動画配信サイトで見ることができるようになっています。

ご自宅でのんびり楽しんでいただくことができる映画ですね。

さらに、ノベライズ版集英社オレンジ文庫、コミック版集英社ジャンプコミックスからもそれぞれ発売されています。

小説やコミックがいいよというあなたはぜひこちらでお楽しみください！

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本日のブログはここまでにしようと思います。

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