物書きたちの葛藤と『ハンチバック』の多重構造に迫る
こんにちは。り📚書評家です。
みなさまいかがお過ごしですか。
本日の独自書評はこちら。
市川沙央さんによる芥川賞受賞作『ハンチバック』をレビューします。
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- 物書きたちの葛藤と『ハンチバック』の多重構造に迫る
- 著者さんによるデビュー作『ハンチバック』
- 小説『ハンチバック』主人公のクリエイティブ性
- 複数構造をしている小説『ハンチバック』の3つのパート
- 創作の物語で自分を昇華させたプロ作家
- 終わりに📚
著者さんによるデビュー作『ハンチバック』
第169回芥川賞を単独受賞したのが市川沙央さんのデビュー作『ハンチバック』です。
『ハンチバック』は文芸誌『文學界』の登竜門である「文學界新人賞」を受賞した、著者さんのデビュー作となっています。
『ハンチバック』は、読者の混乱や衝撃をやすやすと想定していたのだろうと思わせる、実に緻密な小説です。
小説『ハンチバック』主人公のクリエイティブ性
小説『ハンチバック』の主人公・井沢釈華はミオチュブラー・ミオパチー患者の女性です。肉体的に大きなハンデを持っています。
体が思うように動かせない分、内面では世の中や他者への気持ちがくすぶっている様子。
対面で意見をぶつけ合って、対峙するような場面を避けているような傾向があるとわたしは感じました。
その分、主人公の井沢釈華がすこぶるずば抜けているものがあります。
それが、クリエイティブ性と、文筆力だと思います。
小説『ハンチバック』主人公は生粋の物書き
小説『ハンチバック』主人公はウェブライターの仕事をし、自身のTwitterアカウントも運営しています。
常に何かを書いているような生粋の物書きです。
自分の望みや思想をおおいに盛り込んで発信していくのですが、ときに自分の思考が偏っている可能性や、糾弾される可能性も思案し、理解しているのです。
その上で自分の現状を客観的に見つめながら、思いをネットの海に投げ込みます。
発話も不自由である主人公
小説『ハンチバック』の主人公・井沢釈華は喉にも機械を埋め込んでいて、ひと工夫をしないと声を発することができません。
しゃべることは出来るものの、かなり体力的なダメージやリスクが大きいようです。
そうした肉体的ダメージへの事情もあり、なおさら本来ならば相手に伝えたいことが山のようにあるのでしょう。
小説『ハンチバック』の地の文の中でわれわれ読者に対し、主人公は幅広いクリエイティブな思考を読ませてくれます。
複数構造をしている小説『ハンチバック』の3つのパート
小説『ハンチバック』を読むとまず登場するのは、ワードプレスに入稿された記事のパートです。
これは「これまでネットに残してきた汚らしい分泌液の痕跡」と井沢釈華が語る、彼女の創作世界です。
そして2つめに、ミオパチー患者・井沢釈華の一人称パートが続きます。
最後3つめが苦学生・紗花の一人称パートです。
これら3つのパートは先へ進むごとに前のものを包み込んで大きくなってくるようなイメージです。
1つ前のパートがあってこその、今のパート。
前のものに影響されて物語が突き進んでいきます。
それらすべてを包み込んでいるのが、市川沙央さんの書いた小説『ハンチバック』に当たるのではないでしょうか。
小説『ハンチバック』の主人公は誰か
そんな『ハンチバック』を読み解く上で最も大きな問題になるのは、複数のパートがもたらす作用です。
どれかの物語の中に、どれかの物語が内包されているのではにかなと考えるようになりました。
続いてはAをBのパートの主人公が読んでいて......という繋がりで、複数のパーツが大きくまとめられるものと仮定していきます。
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創作の物語で自分を昇華させたプロ作家
わたしは小説『ハンチバック』のラストは、物書きである井沢釈華が締めくくったのではないかと推測しました。
『ハンチバック』の中で時系列が飛んだその後の急展開は、実は「主人公・井沢釈華が自ら描いた創作の物語」であり、彼女が「自分を成仏させるために描いた物語」なのではないでしょうか。
小説『ハンチバック』井沢釈華の才能
満足に言葉を話すことができず、書くことや思考することに長けているクリエイティブな主人公・井沢釈華。
また文学が好きなのだけれども、障害者にとって難易度の高い「アナログな読書」を嫌って、自らはデジタルコンテンツを生産する側の者である主人公・井沢釈華。
彼女は自分のクリエイティブな才能と文筆力を武器に、自分の壁となる物事にことごとく対抗してきました。
まるで生きていくために、生きていく理由を見つけるために書いているようです。
実際に小説家やライターのみでなく、画家や舞踊家など幅広いジャンルの芸術家に「自分が生きていくために表現活動が欠かせない」という人は多いのではないかと思います。
逆に、絶大なスランプなどでうまくいかない時に、命を落としてしまった偉大な芸術家も多く知られています。
では、「自分が成仏するために」その才能を用いる芸術家がいてもよのではないでしょうか。
生と死が密接な芸術家がいたとしら、作品に登場するものは?
生きるために自分の体を壊してきた物書き。
障害者を産みたくない保守的な人たちの運動に傷つけられてきた物書き。
自分は生きるために傷ついているのだから、死ぬための生があっても良いのではないかと考える物書き。
障害者の中絶が許されているのだから、障害者の自分は中絶をしても許されるのではないかと考える物書き。
井沢釈華の主人公は自らの筆で、自分のそんな思いを成仏させたかったのではないでしょうか。
せめて自分の物語の中では、自分の思うように死んでいきたかったのではないでしょうか。
自分の人生の終わりを、せめて自分の希望通りに物語の中で描き表してみたいと考えたのかもしれません。
この謎の終盤部分は、書くことで生きて、生まれてくることや生きること、死んでいくことや殺すことについて常日頃思案している芸術家が、「自分の手で終わらせた物語」と解釈することができる作中作を孕む小説だと感じました。
終わりに📚
本日の書評では書評『ハンチバック』をご紹介しました。
受賞から時間が経ってもふと読み返したくなる日が訪れる小説です。
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